研究実績の概要 |
褐虫藻と総称される渦鞭毛藻類は、海洋において無脊椎動物と共生関係にあることが知られている。本研究では、共生藻類を保有するタコクラゲに着目し、それらから「個体群間における共生」について思考する探求型の授業構築を目指した。 今年度は、昨年度に課題となった「共生藻のみに特化した遺伝子」を検討し、鹿児島県、高知県、石川県で採集されたタコクラゲに共生している藻類の同定を行なうことで、基礎データの獲得を目指した。 昨年度に明らかになった共生藻類の相同性検索の結果である広義のSymbiodiniumは、多様性があるため、それを科とみなし、分子系統学的にA~Iの9つの主要クレードに分け、それらに属名を与えることが提案されている(LaJeunesse et al., 2018)。そこで今回、共生藻のみが保有する独自のDNAを持つ葉緑体に着目した。リボソーム遺伝子(18SrDNA)より進化速度が速く、クレード内の種間の解析に最適とされている葉緑体DNAに関連するcp23SドメインV領域(cp23S-DomainV)(Scott R. Santos et al., 2002)を用いた遺伝子解析を試みた。相同性検索および分子系統樹の作成により、鹿児島の共生藻はクレードBのBreviolum sp.、高知と石川の共生藻はクレードCのCladocopium sp.に属する渦鞭毛藻と相同性が高いことが分かった。 次に、これらの基礎データを用いた探求型授業案を考案した。始めに、タコクラゲを実際に観察することで別の生物が共生していることを実感させ、目的意識を持って分子レベルからアプローチした探求活動を行なう。その際、葉緑体に関連する遺伝子を用いるため、葉緑体は独自のDNAを持つことがより意識づけされると期待される。
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