【研究目的】外来遺伝子を安定的に発現するトランスジェニック(Tg)生物を作出するためには、外来遺伝子をゲノム上のセーフハーバー領域に組み込む必要がある。しかしながら、ゼブラフィッシュにおいて、そのような手法は未だ確立されていない。研究代表者の所属研究室で過去に作出されたUAS:GFP Tgゼブラフィッシュは、十数世代にわたり、Gal4存在下でGFPを高発現し続けてきた。この系統のUAS:GFP配列の導入部位をセーフハーバー領域と推定し、その領域に目的遺伝子を組み込む手法の開発を目指した。 【研究方法】まず、CRISPR/Cas9法により、phiC31インテグラーゼ認識配列attPをセーフハーバー推定領域に組み込んだノックインフィッシュを作出した。次に、このノックインフィッシュと筋肉特異的Gal4系統を掛け合わせて得られた受精卵に、phiC31インテグラーゼ認識配列attB、UAS配列の下流につなげた赤色蛍光タンパク質遺伝子mScarletを有するドナープラスミドをphiC31インテグラーゼmRNAとともに顕微注入した。 【研究成果】筋肉特異的にmScarletを発現する稚魚を選抜し、これらを成魚になるまで育て掛け合わせた結果、Gal4存在下で筋肉特異的にmScarletを高発現する次世代が得られた。PCRとシーケンス解析により、mScarletを発現する次世代において、ドナープラスミドがattP配列に組み込まれていることが明らかとなった。この手法を応用し、UASの下流にニトロレダクターゼ遺伝子NTRを配置したTgフィッシュを作出したところ、メトロニダゾール投与により、組織特異的に細胞死を誘導することに成功した。このように、本手法は有用なTgゼブラフィッシュの作出に活用できるため、多岐にわたる研究の発展に貢献すると期待される。
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