申請者の所属研究室は、腫瘍細胞特異的に感染および増殖する増殖型レトロウイルスベクター(RRV)を用いた自殺遺伝子療法を開発し、これまでにさまざまなヒト腫瘍細胞を用いた担癌マウスモデルにおいて優れた治療効果を示すことを明らかにしてきた。昨年度の奨励研究(21H04145)の結果により、RRVを用いた自殺遺伝子療法はヒトのみならずイヌの腫瘍にも有効であることを示す結果がin vitro実験で得られたため、本研究では、イヌの各種腫瘍細胞を用いた担癌モデルマウスを作製し、同療法の治療効果を評価した。 1.イヌ癌モデルマウスにおけるRRVの感染増殖効率の評価:イヌ腫瘍細胞をヌードマウスに皮下移植した担癌モデルマウスに、これまでに所属研究室で作製済みであるルシフェラーゼ発現RRVを腫瘍内投与し、RRVの感染・増殖効率をin vivoイメージングを用いて経時的に画像解析により評価した。対照群と比較してRRV群では、ウイルスそのものの増殖により腫瘍全体への感染伝播が認められた。また発光強度の解析結果からも、最終的にRRV群からは対照群を上回るシグナルが検出された。 2.イヌ癌モデルマウスにおけるRRVの抗腫瘍効果の評価:これまでに所属研究室で作製済みであるシトシン脱アミノ化酵素遺伝子を搭載するRRVを、線維肉腫細胞を皮下移植したヌードマウスに腫瘍内投与した。その後に薬物前駆体である5-フルオロシトシンを週3回投与し、腫瘍の退縮を評価した。対照群と比較しRRV群では有意な腫瘍増大抑制効果が認められた。
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