研究課題
がん薬物療法の進歩に伴い、がん化学療法を受ける患者数が増加している。一方で、がん化学療法では、有害事象として腎障害、悪心・嘔吐などが高頻度で起こり、特にシスプラチン誘発腎障害は、抗がん剤の減量や中止に繋がる場合も多く有効ながん治療の遂行を妨げ、臨床上大きな問題となっている。また、腎障害に対する治療法は確立おらず、腎機能を悪化させないことが重要である。研究代表者はこれまでの検討によりシスプラチン誘発腎障害モデルマウスに糖尿病治療薬であるSGLT2阻害剤を併用することで、腎障害が抑制されることを明らかにしている。本研究の目的は、SGLT2阻害剤併用による腎障害抑制の作用機序を明らかにすることで、シスプラチン投与患者に対する腎障害予防薬の開発につながる基礎的知見を集積することである。シスプラチン誘発腎障害は、腎臓近位尿細管細胞へのシスプラチンの蓄積量に依存して腎障害が増悪することが知られている。そこで、シスプラチン(15 mg/kg)を腹腔内投与することによりシスプラチン誘発腎障害モデルマウスを作製し、SGLT2阻害剤の併用による腎臓内のシスプラチン蓄積量に対する影響を検討した。その結果、SGLT2阻害剤併用群では、シスプラチン単独投与群と比較してシスプラチンの腎臓内蓄積量が減少することが明らかになった。SGLT2阻害剤併用によって、シスプラチンの排泄量が増加し、近位尿細管細胞へのシスプラチン蓄積量が減少することで、腎障害が軽減する可能性が考えられる。
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Clinical and Translational Science
巻: 15 ページ: 1664-1675
10.1111/cts.13282