研究課題
肺移植は他臓器移植と比べてサイトメガロウイルス(CMV)感染症のリスクが高いため術後予防投与が必要である。バルガンシクロビル(VGCV)は肺移植後のCMV感染予防に対する唯一の薬剤であるが、重篤な白血球減少によりVGCV投与の継続が困難となる場合がある。副作用を予測するバイオマーカーの1つに薬物血中濃度があるが、VGCV予防投与患者における毒性域は確立していない。本研究では、VGCVの活性代謝物であるガンシクロビル(GCV)の血中濃度と副作用との関連について後方視的観察研究を実施した。2021年4月から2022年6月の間に京都大学医学部附属病院にて肺移植が施行された成人患者24名を対象とし、GCV血中トラフ濃度とgrade 3(CTCAE v.5.0)以上の白血球減少の関連を解析した。また、非線形混合効果モデルを用いた母集団薬物動態解析によりGCVの薬物動態に影響を与える因子の探索を行なった。Grade 3以上の白血球減少を発現した患者(3名)では、その他の患者(21名)と比較して、GCV血中濃度は有意に高値であった(1605.7 ± 860.1 vs 380.5 ± 175.8 ng/mL、p<0.001)。Grade 3以上の白血球減少を予測するGCV血中濃度の閾値は872.0 ng/mLと推定された。GCV血中濃度が872.0 ng/mL以上の患者(3名)では、全例で白血球減少が原因でVGCVが中止され、1名は中止後にCMV感染を認めた。母集団薬物動態解析の結果、GCVクリアランスの共変量として再肺移植とクレアチニンクリアランス(Ccr)が抽出された。本結果より、重篤な白血球減少を予測するGCV血中トラフ濃度は872.0 ng/mL以上であることが示唆された。再肺移植やCcrの低い患者ではTDMに基づいたVGCV の個別化投与設計が望ましいと考えられる。
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