カヘキシアは、進行癌患者の約80%に認められる代謝異常症候群のひとつであり、体重減少や食欲不振といった症状に加え、生命予後を悪化させる可能性が示唆されている。その発症機序は明らかとなっていないが、カヘキシア患者においては、摂食亢進ペプチドの一つであるグレリンの分泌量が相対的に不足していることが知られている。アナモレリンは、カヘキシアに適応をもつ唯一の治療薬であり、グレリン受容体を介して治療効果を発揮する。その一方で、約40%の治療不応患者が存在することが明らかとなっているが、その要因については不明である。また、アナモレリンは、薬物間相互作用や遺伝的背景などにより、薬物動態に個人差が生じる可能性が考えられるが、血中濃度と治療効果との関連性については不明である。本研究では、アナモレリン治療不応患者における要因探索を目的として、患者本来の血中グレリン濃度とアナモレリンの薬物動態に焦点を当て、以下の課題を検討した。 ①UHPLC-MS/MSを用いた血漿中アナモレリン濃度測定系の確立 本課題では、固相抽出法とUHPLC-MS/MSを組み合わせることにより、ハイスループットかつ高感度な測定系の確立を目的とした。アナモレリンおよび内標準物質であるアナモレリン重水素体のMS条件については検討済である。固相抽出カラムについては、現在条件検討中であり、必要な試薬等は購入済である。 ②血中グレリン濃度とアナモレリンの薬物動態が治療効果へ与える影響の評価 ①の測定系確立後、アナモレリン服用予定患者60例を対象に、服用前および服用後12週目時点での血中アナモレリン濃度および血中グレリン濃度を測定予定である。なお、血中グレリン濃度測定に必要なELISAキットは購入済である。血中濃度測定後、得られたデータより、アナモレリンの治療効果に影響を与える因子を多変量ロジスティック回帰分析により探索予定である。
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