改正薬機法が求める小児領域における特定用途医薬品の個別最適化投与設計を可能とすることを目的とし、小児適応のない抗菌薬、もしくは小児適応を有するが日本人小児における母集団薬物動態モデル(母集団PKモデル)がない抗菌薬の母集団PKモデルの構築を行った。 本研究では、スルバクタム/アンピシリン配合剤(SBT/ABPC)、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤(PIPC/TAZ)を対象薬とし、血漿中薬物濃度、試料採取時間、投与量、性別、年齢、体重等の詳細データを用いて、血漿中薬物濃度、患者背景因子などを統合し、母集団PK解析のためのデータセットを作成した。母集団PK解析にはプログラムNONMEM7を用い、2-コンパートメントモデルを構築した。モデルの適格性はGoodness-of-fit plotを用いて評価した。 その結果、SBT/ABPC(54名、0.08~16.42 歳、284時点の血中濃度と90時点の尿中濃度)、PIPC/TAZ(20名、0.6~15歳、PIPCは76時点、TAZは63時点の血中濃度)を用いて、それぞれ2-コンパートメントモデルを適応し、母集団PKモデルを構築した。いずれの薬物においても、パラメータを体重補正したことにより、患児の体重により患児個々の血漿中薬物濃度時間曲線の推定が可能となった。モデルの適格性については、予測値のプロットでは良好な相関関係を認め、重み付き残差のプロットでは0を中心に±4の間に均等に分布していることが示された。 SBT/ABPCについては、個別最適化投与設計をすることができた。今後は、さらにPIPC/TAZなどについて、感染症の起因菌の最小発育阻止濃度等を用いたランダムサンプリング等を行うことで、日本人小児における抗菌薬の最適化投与の確立を行っていく予定である。
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