インフラマソームとは、病原微生物や代謝産物などの分子パターンを認識して活性化する細胞質内タンパク質複合体の総称であり、炎症性サイトカインであるIL-1βやIL-18の産生を誘導することで、炎症反応を惹起する。インフラマソームは、リガンドを認識するNod-like receptors (NLR)s、IL-1β前駆体を切断して活性化する酵素であるcaspase-1、それらのアダプター分子として働くASCにより構成されている。多くのNLRsが、遺伝性炎症疾患やメタボリックシンドロームと関連していると報告されている。当研究室では、インフラマソーム構成タンパク質をコムギ胚芽無細胞合成技術により合成し、Alpha(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)で検出することにより、インフラマソームの試験管内再構成に成功している。この系を用いて、遺伝性炎症疾患に対する分子標的薬の開発を進めていたところ、NLRP3インフラマソーム活性化に関与する他の分子の存在を示唆するデータが得られた。そこで、ヒトの約2万種類のタンパク質をアレイ化した20K-Human Protein Array (20K-HUPA)を用いてNLRP3と相互作用する新規タンパク質を網羅的に探索し、いくつかの候補タンパク質を得た。細胞レベルでNLRP3インフラマソームの機能に影響を与えることを確認できたものの中から最も有力な候補について、トランスジェニックマウスを作製し、個体レベルでの評価を行った。昨年度までに細胞での評価と矛盾しない結果を得ていたのだが、十分な個体数を確保できていなかったため、今年度も引き続き評価を進めた。
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