研究実績の概要 |
トロポニンはI, T, Cのサブユニットが存在し、血中ではトロポニンI(cTnI)とトロポニンT(cTnT)が心筋障害を反映するバイオマーカーとして測定されている。cTnIとcTnTに対する自己抗体が存在することが知られているが、その存在様式や出現頻度は解明されていない。 本研究は、cTnIとcTnTに対する自己抗体の存在様式や出現頻度を明らかにすることを目的とした。cTnIはAlinity I(アボットジャパン合同会社)、cTnTはcobas e801(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)にて測定した。トロポニンの存在様式は、血清をゲルろ過HPLC(AKTA Explorer 100 System, Cytiva)にて分離し、溶出画分のcTnIとcTnT濃度を測定し、確認した。自己抗体の存在は、ゲルろ過HPLCとProtein G (Cytiva)吸収試験にて判定した。さらに、自己抗体の有無とcTnI/cTnT比の関係について調査した。 ゲルろ過HPLCにおいて、多くの症例ではトロポニンはcTnI-C複合体と遊離のcTnTとして溶出された。一方、一部の症例ではトロポニンは自己抗体-cTnI-C複合体または自己抗体-cTnI-C-T複合体として溶出された。ゲルろ過HPLCとProtein G吸収試験から、自己抗体陽性と判定する吸収試験のトロポニン回収率(カットオフ)はcTnI<41.2%、cTnT<49.8%であった。自己抗体はcTnIで15.4%、cTnTで1.9%に認められた。また、自己抗体の有無でcTnI/cTnT比に統計学的な有意差は認められなかった。 本研究によって、cTnIに対する自己抗体がcTnTと比較して高頻度に認められることが明らかになったが、自己抗体はcTnIとcTnTの乖離を増大させるものではないと考えられた。
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