ウイルスに対する感染防御において、中和活性を持たない抗体が有するエフェクター機能が着目されつつある。その1つに、抗体依存性細胞貪食(ADCP)が挙げられる。ADCPは、病原体と結合した特異的抗体のFcが食細胞のFcγ受容体に結合することで、食作用が亢進する現象である。これまでにインフルエンザウイルス(Flu)やHIVにおいて、感染リスクの減少に寄与することが報告された。しかし、感染防御に対する貢献度について未だ完全には明らかになっていない。 本研究では、サイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス(AdV)、Flu、アデノ随伴ウイルス(AAV)を対象とした。各ウイルスに対するモノクローナル抗体(mAb)が有するADCP活性を評価し、活性が認められたmAbに対してプラークアッセイにより感染防御への寄与度を解析した。 CMV、Fluに対するmAbにおいてADCP活性を認めたが、AdVに対するmAbでは認められなかった。ADCP活性を認めたmAbを用いたプラークアッセイでは、プラークの減少に有意差を認めなかった。AAVに関して、ウイルス精製の収量に問題があり、必要な収量が得られなかったため、精製条件を改善して現在も継続中である。 現段階では、プラークアッセイによる解析を通した感染防御への貢献度の解明には至っていない。原因として、病原体-抗体複合体と食細胞との反応時間が適切でない可能性がある。適切に評価できるアッセイへの改善が、今後の検討課題である。他方で、CMVに対するmAbに関して、ウイルス粒子に対するADCP活性と感染細胞に対する活性が異なった。これにより、ADCP活性を有する抗体だとしても、結合の対象がウイルス粒子か感染細胞かによってADCPを誘導できない可能性が考えられる。今後は、本研究課題で有望な結果が得られたCMVを対象とし、この点を含めた詳細な解析を予定している。
|