研究実績の概要 |
研究目的:Vault RNA (vtRNA1-1) は, RNAポリメラーゼIIIによって転写される98塩基の小さな非翻訳RNAである. 我々は血液中vtRNA1-1を解析したところ, 血清中とともにリンパ球と単球に多く存在することを見出した. さらに化学療法を実施中の患者血清中vtRNA1-1が低値を示すことを見出したため, 本研究では, vtRNA1-1と造血能との関連について検討することを目的とした. 研究方法:当院血液内科で骨髄検査を実施された患者の検査終了後の血液残余検体を使用し, 血清からRNAを抽出後, 定量RT-PCRでvtRNA1-1を定量した. 骨髄cellularityと血清vtRNA1-1量との関連について調査した. 研究成果:本研究期間中に48症例が登録され, 男女比33:15, 年齢中央値 (範囲) 72.5 (29-91) 歳であった. 疾患の内訳はAML (N=9), MDS (N=3), AA (N=2), MPN (N=8), 成熟B細胞性腫瘍 (N=11), 成熟T細胞性腫瘍 (N=5), ALL (N=2), ITP (N=3), 不明 (N=5) であった. 血清vtRNA1-1の定量値の中央値 (範囲) は8.13 (6.95-9.85) Log10 copies/mLであった. 病理医の目視による骨髄Cellularity と血清vtRNA1-1は有意に正に相関を認めた (rs=0.52,P<0.001). また, 末梢血の白血球数 (rs=0.67,P<0.001), 単球数 (rs=0.50,P<0.001), 骨髄有核細胞数 (rs=0.40,P=0.004), 骨髄単球数 (rs=0.46,P<0.001) と有意に相関を認めた. 以上のことから, 血清vtRNA1-1は造血能だけでなく末梢血の白血球数と強く関連した.
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