研究課題
①周波数可変マイクロ波単一光子生成:共振器に結合した超伝導量子ビットを用いたマイクロ波単一光子生成手法を改良し、広帯域共振器を用いることにより、光子波束の中心周波数を共振器線幅程度の範囲で可変にし、さらに波束形状も可変にした単一光子生成技術を実現した。②マイクロ波単一光子を用いた測定型量子計算に向けた高速読み出し:上記のマイクロ波単一光子生成手法を量子ビットからの状態送信に用い、その逆過程を受信に用いることで、伝送線路を介した2つの量子ビット間の状態伝送を実装する際に用いる受信側の量子ビットの高速読み出しを実現した。③ジョセフソン接合の非線形性を利用した伝搬型パラメトリック増幅器の開発:ジョセフソン接合列からなる伝送線路において、独自の設計による波数分散制御によりインピーダンス整合を実現し、さらに作製プロセスの改善による回路の低損失化を図って広帯域・高利得・低雑音特性を有する伝搬型パラメトリック増幅器を試みた。直列に接続されたジョセフソン接合のばらつきにより、素子の再現性が悪く、最大利得が7dB程度しか得られていないとともに利得の周波数依存性におけるリップルも大きい。④ジョセフソン接合リング回路を用いた受動型マイクロ波サーキュレータ:独自に提案したジョセフソン接合リング回路により、磁束バイアスとゲート電荷バイアスによる動作点設定のみでマイクロ波伝搬の非相反性を実現した、受動型のサーキュレータ回路を提案し、実証を行った。
2: おおむね順調に進展している
上記研究実績に示したように、主要なテーマについてそれぞれ進展が得られた。一方でいくつかの課題についてはまだ結果が得られていない。例えば、1次元全結合型量子ネットワーク実現に向けた、一方向性マイクロ波光子送受信を可能にする量子ノードの実証については、実験用の素子のパラメータが設計通りに作製できておらず実験が遅れている。
今後は以下の方策で研究に取り組む。①周波数可変マイクロ波単一光子生成過程により生成された光子の量子状態トモグラフィ:昨年度実証した広帯域共振器に結合した超伝導量子ビットを用いた周波数可変かつ波束形状可変単一光子生成過程の評価を、伝搬光子の量子状態トモグラフィにより行う。②マイクロ波単一光子を用いた量子ビット間の状態転送と測定型量子計算に向けた高速読み出し:上記のマイクロ波単一光子生成手法を量子ビットからの状態送信に用い、その逆過程を受信に用いることで、伝送線路を介した2つの量子ビット間の状態伝送を実装する。また受信側の量子ビットの高速読み出しを実現することを可能にする一方で、読み出しをしないときのデコヒーレンスを抑制するような、非線形フィルタを用いた読み出し方式を提案し実証する。③1次元全結合型量子ネットワーク実現に向けた、一方向性マイクロ波光子送受信を可能にする量子ノードの実証:超伝導量子ビット2つと共振回路から構成され、1/4波長だけ離れた二点で伝送線路と相互作用する量子ノードを用いた一方向性マイクロ波光子送受信の実証に昨年度に引き続き取り組む。④ジョセフソン接合の非線形性を利用した伝搬型パラメトリック増幅器の改良:昨年度開発したジョセフソン接合列を用いた伝送線路で構成される伝搬型パラメトリック増幅器について、設計と作製プロセスの改善による回路の均一性向上および低損失化を図り広帯域・高利得・低雑音特性を向上する。⑤ジョセフソン接合リング回路を用いた受動型マイクロ波サーキュレータの動作評価:昨年度提案・実証したジョセフソン接合リング回路を用いた受動型のサーキュレータ回路の動作の安定化と準粒子トンネリングによる揺らぎの影響を除去した評価を行い、理論との定量的な比較を行う。
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Physical Review A
巻: 106 ページ: 052415
10.1103/PhysRevA.106.052415