研究課題/領域番号 |
22H04953
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮崎 康次 九州大学, 工学研究院, 教授 (70315159)
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研究分担者 |
八木 貴志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (10415755)
高尻 雅之 東海大学, 工学部, 教授 (50631818)
松平 和之 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (40312342)
矢吹 智英 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70734143)
三浦 飛鳥 九州工業大学, 環境エネルギー融合研究センター, 助教 (10911274)
河野 翔也 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (60878429)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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キーワード | フォノン / 非接触熱伝導率測定 / 分子動力学 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
微小領域熱伝導率測定を中心に進める本計画の初年度として、測定対象となる微小サンプル作製、非接触熱伝導率測定装置の構築、それらを考察するために必要な第一原理分子動力学計算の手法確立に注力した。その結果、計画した測定対象であるフレーク状のビスマステルライド結晶、酸化イリジウム針状結晶を得て、それぞれの材料特性を測定することで、生成した結晶が高い質を有することも確認した。特に酸化イリジウム針状結晶についてはSpring-8でフォノン分散関係の測定に着手し、数値計算結果と良い一致を得て計算の妥当性を示した。一方で想定されたガンマ点付近におけるフォノンの短い緩和時間については測定されなかった。今後、フォノンの特性が反映される熱伝導率測定の結果と併せて現象を考察する。予備実験として接触式の熱伝導率測定を試みたが、接触点の熱抵抗や電気抵抗が無視できず、それらによって生じる発熱が熱伝導率測定を困難にしていることも明確となった。ラマン分光を用いた非接触熱伝導率測定についても装置を選定導入した。次年度以降、測定システムを構築する。非接触熱伝導率測定サーモリフレクタンス法にも着手し、微小領域でも反射率の温度依存性を確認できた予備実験的な結果を得た。分子動力学計算においては、機械学習を利用した原子間ポテンシャルの構築手法の確立に着手し、機械学習に用いる多項式項数設定や分子動力学計算のサイズ依存性を取り除くなど具体的なノウハウを得た。この計算で得られるビスマステルライドの熱伝導率は、室温から500Kまでの温度依存性を含めてよく実験結果を説明した。今後、経験的ポテンシャルが提案されていない材料においても、微細構造における熱輸送メカニズムの詳細を数値計算から考察できる環境を整えた。これらフォノンエンジニアリング技術の確立に寄与する測定法、計算手法について概ね計画通り研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小サンプルの作製、測定系(ラマン測定、サーモリフレクタンス測定)の構築、機械学習を併用した第一原理分子動力学計算については計画通り順調に研究を進めている。非接触熱伝導率測定として高速度赤外線カメラの導入を予定していたが、デモ実験して測定の可否を検討したところ予定していたカメラでは性能が不十分であり、測定対象を予定以上の温度に加熱しないと画像を捉えられないため、翌年度に高速度赤外線カメラ選定を持ち越した。
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今後の研究の推進方策 |
微小サンプルについては準備を終えたので、今後は非接触熱伝導率測定手法の構築さらにはその測定領域の微小化に取り組む。ラマン分光による熱伝導率測定については、温度測定情報をどの程度の空間領域からどの程度の温度分解能で獲得できるか検討を進める。サーモリフレクタンス法では加熱点と温度測定点にレーザーを集光しているが、その位置制御を高めることが目標となる。高速度赤外線カメラを用いた手法については装置選定を進め、装置が持つ高い時空間分解能を活用して、従来の熱伝導率測定法の妥当性についても直接温度測定を通して確認する。分子動力学計算については、経験的ポテンシャルのない材料に対しても計算を進め、構築したノウハウの妥当性を引き続き検討する。
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