研究課題/領域番号 |
22H04956
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西澤 松彦 東北大学, 工学研究科, 教授 (20273592)
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研究分担者 |
神崎 展 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10272262)
中川 敦寛 東北大学, 大学病院, 教授 (10447162)
山崎 研志 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (40294798)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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キーワード | 皮膚 / マイクロニードル |
研究実績の概要 |
ポーラスマイクロニードルによる(1)皮内センシングと(2)刺さない台形ニードルについて成果が得られた。 (1) 活性酸素(ROS)の代表であるH2O2と,電解質Na+を計測対象とし,ポーラスマイクロニードルへの電気化学機能の搭載によって低侵襲センシングツールを実現した。H2O2の計測はアンペロメトリー(電流計測)によって行った。白金の蒸着とパリレンによる絶縁を行うが,白金はポーラス孔を塞がない程度の成膜に留め,ニードル内部を通した外部とのイオン接続を実現した。ブタの皮膚切片を用いたモデル実験では,メナジオンによる刺激が皮膚内のH2O2生成を促進する様子が計測できた。Na+の計測は,ポテンショメトリー(電位計測)によって行った。ニードル側面にカーボンペーストで電極を形成し,イオノフォア膜を塗布した後にパリレンで先端部以外を絶縁した。ブタの皮膚切片を用いたモデル実験では,Na+濃度に対する線形的なネルンスト応答が確かめられた。 (2) 先端を台形状に加工して「刺さらない」ポーラスマイクロニードルを実現し,通常は皮膚浸透が不可能な10000 mol/gのデキストランの高速浸透が可能になる事を実証した。高さ300 μmの台形ニードルのアレイを作製し,ブタの摘出皮膚に押し付けた際の経皮抵抗が200 kΩから20 kΩ程度に1ケタ低下することを確認した。突起による延伸で表皮角質層の密度が低下した結果だと考えられた。この角質延伸効果と通電による電気浸透流とのシナジー効果によって,10000 Daデキストランの皮下浸透が明確に促進された。この成果は,刺さらない低侵襲性ニードルによって大分子の高速浸透を可能にするものであり,医療機器としての承認バリアが低く,これまで経皮投薬の対象ではなかった薬品群(各種ホルモンなど)への適用可能性を開拓したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基幹である「界面イオントロニクス技術の拡充」について,当初計画を超える多くの成果が得られており,皮膚研究の新規ツールを創出できている。特に,台形ポーラスニードルによる“刺さない経皮ポンプ”は,当初計画においては予見していなかったものであり,皮膚への刺激印加を精密に行えるだけでなく,デバイスの実用化および製品化に向けた承認のハードルを劇的に下げると考えられる。よって,技術開発を基幹とする本研究は「最高の達成度」としても良いのかもしれないが,研究項目[2][3]の皮膚機能研究が想定以上に進展したとは言い難いため,評価を下げた。動物実験施設の改修によって初年度の動物実験が滞った状況が解決して環境が整い,動物実験も進み始めている。今後は,上記の新技術を投入して皮膚生理の研究を加速する。
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今後の研究の推進方策 |
以下の項目を並行して進め,バイオ電池およびマイクロニードルに関連する独自のイオントロニクス技術を磨き上げ,さらに想定外の新機能の発掘にも努めていく。 ・皮膚に貼付する発電パッチとして,創傷治癒・薬剤浸透・疼痛緩和に対するバイオ電池の効果検証を継続する。それに加えて,最近実現したWater-Proof 性能を活かし,口内炎治癒用の発電パッチを設計して,口腔粘膜細胞の電気走性の誘導効果を検証する。 ・台形ポーラスニードルによる“刺さない経皮ポンプ”は,製品化に向けた承認ハードルを劇的に下げる重要な成果であるが,さらに皮膚機能研究においても,ニードルによる物理刺激を最小化した皮膚刺激実験を可能とする。この独自の実験系を[2][3]の生理研究に活かす。 ・針型および台形型のポーラスマイクロニードルについて,バイオ発電パッチとの融合に必要なフレキシビリティの獲得を目指し,柔軟なエラストマー基材とニードルの一体化を簡便に実現する方法を探る。 ・電気浸透流を利用する経皮分子輸送の制御技術を深化させ,皮膚機能研究および皮膚パッチ開発に展開する。ポーラスニードルの細孔内壁にアニオン/カチオン性高分子をグラフト重合して電気浸透流の方向を揃えると,アノード/カソード両極からの分子投与が可能となり,カソードでの吸引(従来のジレンマ)が解消できることを見出している。これを利用して,アノード・カソード一体型デバイスによる「デュアル投与」を実現する。分子投与量の倍増のみならず,2 種の薬剤やワクチンの同時投与が高い制御性の下で行えることの意義を実証する。
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