研究課題/領域番号 |
22H04957
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長汐 晃輔 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20373441)
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研究分担者 |
上野 啓司 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40223482)
宮田 耕充 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (80547555)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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キーワード | 2次元材料 / トンネルFET / 置換型ドーピング |
研究実績の概要 |
IoTセンサーで取得したビッグデータをAl解析し,その情報を利用/反映させた社会活動を行うSociety5.0の実現にはIoTデバイスが身の回りにあることを認識しなくなるほどまでに普及することが必須である.普及の壁となっているのが,有線での電源供給であり,自立電源化が必須である.このためには,「環境発電能力の向上」だけでなく,「電子デバイスの超低消費電力化」により多くのIoTデバイスの自立電源化が可能となる.本研究では,集積デバイスにおけるボトルネックであるトランジスタの超低消費電力動作に対し2次元材料を適応することで克服することを試みる. 本年度は,以下の3項目を集中的に研究を進めた.(1)Nb置換によるP型ドープ,Re置換によるN型ドープ結晶育成.化学気相輸送法によりMoS2, WSe2に対してNbを1%及び5%置換した結晶の育成に成功した.置換量の増加により結晶サイズの明確な低下が観察されたが,ラマンによる評価により1%よりも5%で確かに置換量が増加していることを確認した. (2)化学気相堆積法(CVD)による面内ヘテロ構造の成長.多層MoS2に対して,CVDによりWSe2の面内ヘテロ構造の成長をHAADF-STEM観察により明確に観測した.CVD成長時にKBr等の塩を利用することで,高品質な接合界面が形成できることを見出した.これは,700~800℃の成長温度でKBrがテンプレートとなる多層MoS2の端などに形成する酸化物や吸着不純物をエッチングすることできれいな界面形成に繋がったと考えられる. (3)NbドープMoS2によるトンネルFET特性評価.NbドープMoS2において単層/多層が接続した同一結晶面内ヘテロ構造のトンネルFETデバイスを作製し,室温において負性微分抵抗を観測した.これによりタイプIIIのバンドアライメントによるバンド間トンネルであることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナによる社会的な半導体不足により導入予定であったホール計測装置の導入を次年度に繰り越すこととなったが,研究自体は,以下に示す3項目で順調に進んでいる. (1)化学気相輸送法により,Nb置換によるP型ドープ,Re置換によるN型ドープ結晶の作り分けに成功 (2)CVDによるMoS2/WSe2面内ヘテロ構造の成長 (3)NbドープMoS2によるトンネルFETにおける負性微分抵抗の観測 また,グループ内の打ち合わせも科学輸送成長法でのバルク小型単結晶での置換に関する情報をCVD成長にどう適応するか等,共通認識を取って進められている.
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今後の研究の推進方策 |
(1)置換型ドーピングについて:トンネルFETにおいて高いオン電流を得るためには,高濃度にドーピングされた2D結晶ソースが必須である.今年度の研究により,Nbドープ結晶及び,Reドープ結晶を化学気相輸送法により成長出来ることが分かった.今後,キャリア数の温度依存性を計測することでイオン化エネルギーを算出し,室温でのキャリア導入の適正を定量的に判断する.また,NbやReは原子半径が異なるため結晶内に歪を導入する.この歪の影響を検討する. (2)トンネルFETにおけるP型動作について:本年度,NbドープMoS2(P型結晶)における同一結晶面内ヘテロ構造のトンネルFETデバイスにおいて,N型動作を達成した.今後は,ReドープMoSe2(N型結晶)においてP型動作の研究を進める. (3)ウエハースケールでの基礎研究 劈開での単一結晶での研究から,ウエハースケールでの研究に展開するため2インチサファイア上に製膜したMoS2のデバイス特性評価を進める.
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