研究課題/領域番号 |
22H04962
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
岩崎 孝之 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80454031)
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研究分担者 |
谷口 尚 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 拠点長 (80354413)
宮本 良之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (70500784)
牧野 俊晴 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究チーム長 (20360258)
岩本 敏 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (40359667)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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キーワード | 量子光源 / ダイヤモンド / 量子ネットワーク |
研究実績の概要 |
イオン打込み後に2100℃の高温高圧アニールで形成した多数のSnV中心の計測から、発光波長の分布として3.9 GHzが得られ、この狭い不均一分布においてスペクトルが重なるほぼ同質なフォトンを生成する複数のSnVを観測した。さらに、異なる基板間のSnVにおいてもスペクトルの重なりを観測した。また、波長分布計測においてSn原子の同位体による波長シフトを観測し、第一原理計算によってSn原子の振動に起因することを明らかにした。また、PbVの共鳴励起に挑戦し、世界で初めてその線幅の測定に成功した。イオン打込みと2100℃での高温高圧アニールによって形成したPbVから自然幅に近い線幅が得られ、発光波長の時間的安定性を確認した。また、さらなる高品質化を目指し、高温高圧アニール条件を高温に拡張した。 量子光源の電荷安定性として、レーザ照射時の電荷遷移ダイナミクスを研究した。SnVへの弱い共鳴レーザのみの照射では秒単位で発光が消失するのに対し、非共鳴レーザを同時に照射すると消失が加速されることがわかった。非発光状態からの回復に関する第一原理計算を行い、SnVが発光できなくなった場合に、格子欠陥の光励起により生じた正孔がSnVに移動することでSnVの発光が回復することが示唆された。 スピン特性としては、SnV中心の磁場印加でのスピン選択励起を実施し、共鳴励起によってスピン状態にアクセス可能であることを確認した。また、ノイズセンサとして機能するNV中心のスピン特性評価系を量子光源の測定装置に導入し、光検出磁気共鳴の測定を行った。 量子ネットワークデバイスの創製に向け、テスト基板を用いたナノフォトニクス構造形成を行い、光取出し効率の向上が期待できる微小直径を有するナノ構造の形成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子光源系の高品質合成、電荷制御技術、スピン特性評価、量子ネットワークデバイスの創製に関する研究の成果を得ており、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
量子光源の電荷制御のさらなる理解のために、様々なレーザ照射条件における光ゲート計測を実施する。イオン打込み後に高い温度で形成した量子光源の詳細な特性評価を行う。スピン特性では、NV中心の光検出磁気共鳴計測をパルス計測に拡張し、さらにIV族-空孔中心の初期化・検出パルスを含んだシークエンスでの測定を実施する。デバイスに関して、ナノフォトニクス構造内での量子光源の位置を考慮した光学計算および高品質量子光源を含んだ構造形成のためのプロセス開発を推進する。
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