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2022 年度 実績報告書

トンネル磁気抵抗効果の新展開:軌道対称性効果の解明と新規量子デバイスの創出

研究課題

研究課題/領域番号 22H04966
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

三谷 誠司  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究センター, センター長 (20250813)

研究分担者 岡林 潤  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70361508)
柳原 英人  筑波大学, 数理物質系, 教授 (50302386)
三浦 良雄  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, グループリーダー (10361198)
研究期間 (年度) 2022-04-27 – 2027-03-31
キーワードトンネル磁気抵抗効果 / コヒーレントトンネル / 軌道対称性 / 界面軌道物理 / 量子デバイス
研究実績の概要

初年度は計画した種々の研究を行う中で特に高品位試料の作製に注力し、それらを用いたトンネル磁気抵抗効果に関する実験データの取得において主要な成果を得た。試料作製および測定評価に必要な装置整備も進めた。主要な成果を以下に示す。
(1)トンネル磁気抵抗効果のバリア層厚に対する振動効果を実験面から明らかにするために、高品位試料を作製し、振動現象の系統的なデータを取得するとともにその解析を進めた。従来より報告されているサイン波的な振動ではなく、共鳴現象に特有の関数形の性格を有することが分かってきた。物理的発現メカニズムを解明するための重要な知見である。なお、Mg4AlOxという化学組成のバリア材料を用いることで試料の高品位化が出来たことも特筆すべき点である。
(2) (111)結晶配向したMgOバリアを用いたトンネル接合を作製し、(111)面がエピタキシャル成長したトンネル接合における室温磁気抵抗効果を世界で初めて観測した。現状の強磁性トンネル接合では(001)面のMgOバリアを用いることが常識であるが、それに囚われない新展開と言える。なお、MgOバリア(001)方位ではデルタ1コヒーレントトンネル効果が重要な微視的トンネル過程となるが、SrTiO3バリア(111)方位ではラムダ1コヒーレントトンネルとなりことを理論的に明らかにした。このことは軌道対称性の効果の観点で興味深い。
(3)FeRhを用いた強磁性トンネル接合の作製を行い、トンネル磁気抵抗効果の特徴的な振る舞いを見出すとともに、軌道対称性の効果として理解できることを理論計算によって明らかにした。
上記の他、界面磁性および界面スピン輸送が基盤的研究課題であることから、CoSi薄膜のスピン軌道トルクについても調べ、界面効果等の成果を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新たな材料系を含め、高品位強磁性トンネル接合試料を作製することに成功しており、計画した内容に沿って成果が得られた。特にトンネル磁気抵抗効果のバリア層厚に対する振動現象の解明に着実に向かっていること、(111)エピタキシャルバリアを用いた室温トンネル磁気抵抗効果の観測(含、微視的解析)という常識を覆す結果を得て、文字通りトンネル磁気抵抗効果の新展開を果たしつつあることから順調に進展していると言える。装置整備や予備的実験等、今後の研究展開のための準備も着々と進んでおり、明確な重要性を有する研究結果も得られ始めている。

今後の研究の推進方策

研究計画にしたがって順調に成果を挙げつつあるので、基本的に当初計画通りに進めていく。その中でも以下の点に注力する。
(1) トンネル磁気抵抗効果のバリア層厚に対する振動現象は、トンネル効果の科学という広い分野での重要な新展開となり得るため、基礎科学的な観点で深掘りし、教科書に書き加えるような普遍性のある成果としてまとめていくことを狙う。
(2) 強磁性トンネル接合の電極磁性材料として、RuO2などのaltermagnetic物質にも注目する。輸送現象における軌道対称性の効果を深く理解するという観点で、altermagnetic物質は非常に興味深い。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 631% room temperature tunnel magnetoresistance with large oscillation effect in CoFe/MgO/CoFe(001) junctions2023

    • 著者名/発表者名
      Scheike Thomas、Wen Zhenchao、Sukegawa Hiroaki、Mitani Seiji
    • 雑誌名

      Applied Physics Letters

      巻: 122 ページ: 112404-1-6

    • DOI

      10.1063/5.0145873

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Elemental Doping and Interface Effects on Spin-Orbit Torques in CoSi-Based Topological Semimetal Thin Films2022

    • 著者名/発表者名
      Tang Ke、Wen Zhenchao、Seki Takeshi、Sukegawa Hiroaki、Mitani Seiji
    • 雑誌名

      Advanced Materials Interfaces

      巻: 9 ページ: 2201332-1-7

    • DOI

      10.1002/admi.202201332

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Band-folding-driven high tunnel magnetoresistance ratios in (111)-oriented junctions with SrTiO3 barriers2022

    • 著者名/発表者名
      Masuda Keisuke、Itoh Hiroyoshi、Sonobe Yoshiaki、Sukegawa Hiroaki、Mitani Seiji、Miura Yoshio
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 106 ページ: 134438-1-7

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.106.134438

    • 査読あり
  • [学会発表] Fcc(111) epitaxial magnetic tunnel junctions with a Co90Fe10/Mg-Al-O/Co90Fe10 structure2022

    • 著者名/発表者名
      J. Song, T. Scheike, C. He, Z. Wen, H. Sukegawa, T. Ohkubo, K. HONO, S. Mitani
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 機械学習を用いたスピントロニクス材料の理論設計2022

    • 著者名/発表者名
      三浦 良雄
    • 学会等名
      第35期CAMMフォーラム 本例会「コンピュータによる材料開発・物質設計を考える会」
    • 招待講演
  • [学会発表] Giant tunnel magnetoresistance of 429% at 300 K and 1,034% at 10 K in Fe/Mg-rich Mg-Al-O/Fe(001) junctions2022

    • 著者名/発表者名
      H. Sukegawa, T. Scheike, Z. Wen, S. Mitani
    • 学会等名
      24th International Colloquium on Magnetic Films and Surfaces (ICMFS-2022)
    • 国際学会
  • [学会発表] Fe/MgAlO/Fe(001)単結晶トンネル接合における巨大トンネル磁気抵抗効果2022

    • 著者名/発表者名
      介川 裕章, シャイケ トーマス, 温 振超, 葛西 伸哉, 三谷 誠司
    • 学会等名
      第46回日本磁気学会学術講演会
  • [学会発表] fcc-Co90Fe10/MgAlO/Co90Fe10(111)フルエピタキシャル強磁性トンネル接合の開発2022

    • 著者名/発表者名
      ソン ジェユアン, シャイケ トーマス, ハ ツォン, 温 振超, 介川 裕章, 大久保 忠勝, 宝野 和博, 三谷 誠司
    • 学会等名
      第46回日本磁気学会学術講演会
  • [学会発表] トンネル磁気抵抗効果の温度変化に対する新たな物理描像:界面s-d交換相互作用の重要性2022

    • 著者名/発表者名
      増田 啓介, 只野 央将, 三浦 良雄
    • 学会等名
      第46回日本磁気学会学術講演会
  • [学会発表] Machine learning study of highly spin-polarized Heusler alloys at finite temperature2022

    • 著者名/発表者名
      I. KURNIAWAN, Y. MIURA, K. HONO
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [備考] NIMS スピントロニクスグループ

    • URL

      https://www.nims.go.jp/spintronics/indexJ.html

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公開日: 2024-12-25  

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