研究課題/領域番号 |
22H04969
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
寺田 眞浩 東北大学, 理学研究科, 教授 (50217428)
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研究分担者 |
近藤 梓 東北大学, 理学研究科, 准教授 (30645544)
是永 敏伸 岩手大学, 理工学部, 教授 (70335579)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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キーワード | 不斉合成 / 有機分子触媒 / 水素結合 / 塩基 / 触媒 |
研究実績の概要 |
本研究で開発する二塩基協調型という独自の設計概念のもとで開発する基質認識型・超強塩基性有機分子触媒は超強塩基性を実現することが可能である。従って、従来の塩基性有機分子触媒では活性化が困難であったプロ求核剤を利用した触媒反応系の広範な開拓が期待され、これまで未踏領域となっていた変換反応を実現する高いポテンシャルを秘めている。そこで2022年度は主に旧来のキラル超強塩基触媒ビス(グアニジノ)イミノホスホランも活用しながら触媒反応系の探索を中心に行うととともに、「電気的に中性」ならびに「アニオン性」の二塩基協調型触媒群のライブラリーの構築を進めた。 触媒反応系の探索では、当研究室で精力的に開発研究に取り組んでいる[1,2]-phospha-Brook転位を活用して発生困難なカルバニオン種の触媒的な生成と引き続く炭素―炭素結合生成反応の開発をアキラルな超強塩基を用いて行った。その結果、βアシルビニルアニオン、2-クロメン誘導体のアリルアニオン種などの触媒的に発生させたアニオン活性種を活用した反応開発に成功した、こうしたアキラルな触媒を用いた成果を受け、[1,2]-phospha-Brook手に反応の不斉触媒化を検討し、不斉プロトン化にも成功した。 旧来のキラル超強塩基触媒ビス(グアニジノ)イミノホスホランを用いた不斉触媒反応系の開発において一定の成果を挙げてきたが、2022年度はそれらをまとめた総合論文の執筆に多くの時間を取られたが、まとめた結果、本研究の推進につながる新たな展開の着想を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二塩基協調型・超強塩基触媒を用いた不斉触媒反応の開発という観点からは、実現している触媒反応系が限られており、当初の研究計画からはやや遅れているとみている。一方、触媒反応系の開拓という観点からはβアシルビニルアニオン、2-クロメン誘導体のアリルアニオン種などを触媒的に発生させることで炭素―炭素結合生成反応の開発に成果を挙げることができ、[1,2]-phospha-Brook転位を利用した触媒反応系の有用性を示すことができた。特に、2-クロメン誘導体のアリルアニオン種を触媒的に発生することができたことは、今後の更なる展開が期待される利用価値の高いアニオン種の発生法を見出すことができた。当初の研究計画には予定していなかった触媒反応系であったことを考慮すると大きな進展ということができる。 旧来の基質認識型・超強塩基触媒を用いてではあるが、タンデム反応の開発ができたことは重要な知見であると考えている。現在、論文執筆中ではあるがタンデム反応の形式は多様であり、本研究の主題である二塩基協調型・超強塩基触媒の強力な塩基性があれば、更なる展開が期待できると考えられる。一つの触媒で複雑な分子骨格を一挙に構築することが可能なタンデム反応の利用価値は高く、今後の展開が期待される。 一方、エナンチオ選択的なプロトン化にキラル超強塩基の共役酸が有効であることを見出したことは大きな収穫である。今後、遠隔不斉誘導などへと展開する際、エナンチオ選択的なプロトン化が鍵となることが予想されるが、今回の成果はその実現の第一歩とみなすことができる。二塩基協調型・超強塩基触媒のポテンシャルをもってすれば、1,3位などの遠隔位の立体化学制御を実現する触媒反応系へと展開することが期待される。 以上を踏まえると新たな触媒反応系の展開や遠隔位不斉誘導など今後の展開が期待される成果を挙げており、概ね順調ということができる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発する二塩基協調型という独自の設計概念のもとで開発する基質認識型・超強塩基性有機分子触媒は超強塩基性を実現することが可能である。従って、従来の塩基性有機分子触媒では活性化が困難であったプロ求核剤を利用した触媒反応系の広範な開拓が期待される。そこで2024年度以降も引き続き、「電気的に中性」ならびに「アニオン性」の二塩基協調型触媒群とともに、「電気的に中性」と「アニオン性」を組み合わせた触媒系にも触媒探索の幅を広げ、下記の三つの計画を実施する。 計画1:新たな設計概念のもとに開発する「電気的に中性」な二塩基協調型触媒の各種誘導体をキラルジアミン・リンカーで「超強塩基性官能基部位」と「基質認識部位」を連結して収束合成した触媒ライブラリーを構築する。 計画2:アニオン性二塩基協調型触媒も同様に多様な触媒ライブラリーの構築が容易であり、この特徴を活用して酸性度の低い一群のプロ求核剤を用いた新規触媒反応系の開拓を推進する。この際、アニオン性の「超強塩基性官能基」はウレエートから、グアニジンの共役塩基であるグアニジエートやより単純なアルコキシドなども候補官能基として検討する。アニオン性の「基質認識部位」もSchiff塩基に限定されるものではなくカルボキシラートやホスフェートなども導入を検討し、組み合わせによる触媒分子設計は多様性を活かした触媒開発を検討する。 計画3:「超強塩基性官能基」と「基質認識部位」に”電気的に中性な官能基”と”アニオン性の官能基”を組み合わせた触媒設計。「アニオン性/中性」および逆の組み合わせ「中性/アニオン性」をもつ触媒の設計に着手する。 これら計画1~3で構築した触媒ライブラリーを用いて酸性度の低い一連のプロ求核剤を用いた新規触媒反応系の開拓を検討する。また、これらの触媒群は性質の異なる二塩基協調型触媒であることから相補的に探索を進める。
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