研究課題/領域番号 |
22H04973
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
沖野 晃俊 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (60262276)
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研究分担者 |
平田 岳史 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10251612)
青井 貴之 神戸大学, 医学研究科, 教授 (00546997)
千葉 光一 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (20281066)
梅村 知也 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (10312901)
青木 元秀 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (30418917)
松本 義久 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (20302672)
島田 幹男 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (20548557)
岩井 貴弘 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (90756694) [辞退]
高松 利寛 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (10734949)
柳川 由紀 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 特任研究員 (90432591)
成川 知弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 総括研究主幹 (10265473)
壷井 基裕 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (60411774)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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キーワード | 一細胞分析 / プラズマ分光分析 / 元素分析 / サイトメトリー / メタロミクス / 大気圧プラズマ |
研究実績の概要 |
初年度はまず,飛行時間型質量分析装置の選定と購入を行ったが,その納品が3月になったため,既存の四重極型のICP質量分析装置をベースにして,2年度目以降のための基礎検討を実施した。まず,ドロップレット試料導入装置の分析精度の評価を行った。現在のところ,元素の濃度や絶対量が保証された細胞の標準試料が存在しないため,人工のマイクロ粒子を擬似的な細胞標準物質として用いる事を考え,粒子の選定と分析実験を行った。磁性ラテックス粒子を選定し,一粒子中の鉄の質量信号強度を測定して装置由来のばらつきの評価を行った結果,ドロプレットICP質量分析装置由来の相対標準偏差は約39%であると評価した。 次に,単一細胞中の微量元素を高感度に分析する事を目的として,プラズマへの導入前にドロプレットの溶媒を除去する装置を開発した。従来の脱溶媒装置はヒーター加熱による高温を用いていたため,細胞が破裂して質量信号が分離し,信号のSN比が低下するという問題があった。そこで,ドロプレット試料中の細胞破裂を防ぎつつ高速に脱溶媒を行うため,赤外線を用いた脱溶媒装置の開発を行った。550 Wの赤外線ランプ出力では,150 Hzで射出されたドロプレットの脱溶媒を完了できることを蛍光顕微鏡で確認した。このとき,石英ガラス管内のキャリアガス温度は70℃程度であり,ガスを100℃以上に加熱することなくドロプレットの溶媒を気化除去できること示した。目的の細胞を含んだドロプレットだけをセルソータで選定してプラズマ中に導入する事で,開発した赤外線脱溶媒装置の最高速である540Hzでの単一細胞分析が可能になる事を示した。 この他,計画に記載した,細胞の前処理法や,プラズマ強度の変調についても多数の実験と検討を実施し,単一細胞分析に向けた基礎を確立した。さらに,次年度に購入を計画しているセルソータ付きフローサイトメーターの選定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
購入を予定していた,Mattauch-Herzog型の質量分析装置が廃番になっていたため購入ができなかったが,同じく多元素同時分析の可能な飛行時間型の誘導結合プラズマ質量分析装置を選定し,年度末までに納品を完了することができた。これにより,多元素同時分析の準備に遅れが生じたが,2年目に導入するフローサイトメータの選定は予定より早く開始し,ハードウェアの仕様や制御ソフトウェアの検討を前倒しで実施した。その他,研究実績の概要に記載したように,計画していた,単一細胞分析のための様々な検討を並行して実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
目的とする単一細胞を選択的に高温プラズマ中に導入するため,まずは2年目に購入するセルソータ付きフローサイトメーターの選定と,その制御方式の検討を実施する。具体的には,質量分析装置の時間分解能および脱溶媒装置の能力に合わせた間隔で細胞を導入できるセルソーターの選定を行い,そのためのソフトウェアを開発する。そして,それを飛行時間型質量分析装置と結合し,単一細胞中の多元素同時分析を開始する。また同時に,マルチチャンネルの発光分光分析も同時に実施できる系を構築する。2年度目の終盤を目処にして,ハードウェアの整備を完了する予定である。そして,単一細胞の分析に適した,質量分析装置のソフトウェアも作成する。この準備と並行して,分析する細胞の準備も実施し,3年度目には本格的に単一細胞の分析に取り組む。特に,種々の分化段階や機能的特徴を有する免疫細胞,特にTリンパ球に注目し,免疫細胞の機能と相関がある微量元素の同定を実施する。具体的には,ヒトiPS細胞からT細胞を分化誘導後,T細胞サブセットの分類に用いられるマーカー分子を認識する抗体を磁気ビーズで標識した細胞由来の内在性微量元素の分析を行う。それを皮切りに,分化前後のiPS細胞やがん幹細胞などの分析へと分析対象を拡大し,再生医療を中心とした研究に広く貢献したいと考えている。
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備考 |
2022年10月14日に青森県三沢市立三沢小学校において「プラズマがひらく未来!」と題した講演を行い,約150名の小学生と保護者,教職員の皆様に好評を頂いた。
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