研究課題
どのようにして植物は肥料三要素に関する栄養情報を統合して成長の最適化を行なっているかを解明することを目的として研究を進めた。まず、硝酸シグナル応答において中心的な役割を担うNLP7転写因子の硝酸シグナル受容ドメインは硝酸イオンに直接結合することを示し、NLP7が硝酸センサーであることを明らかにした。また、NLP7の標的遺伝子の一つがNADH合成経路の鍵酵素遺伝子(AO)であることから、NLP7結合部位が破壊された変異型AOプロモーターあるいは野生型AOプロモーターによってAOの発現が制御されているシロイヌナズナ系統を作出していたが、これらにおける遺伝子発現を包括的に比較するとともに硝酸還元活性も比較することで、硝酸シグナルがNADH合成を促進する理由はTCA回路を維持するためであり、NLP7によるAOの制御は硝酸シグナルに応答した広範囲な遺伝子発現の変化に必要であることを明らかにした。また、NLP7の標的遺伝子の一つとしてHB52転写因子遺伝子を同定し、この転写制御の意義は葉緑体の機能維持であることを示唆していたことから、異なる光条件下にあるnlp7変異体とhb52変異体の葉緑体の電子顕微鏡観察を行うことで、このことを確立した。一方で、イネにおける窒素欠乏応答を担う転写抑制因子OsHHO3は幾つかのリン酸トランスポーター遺伝子の発現抑制因子でもあることを発見し、この抑制の意義を明らかするための解析を開始した。また、共発現解析等によりOsHHO3遺伝子と同様にイネにおける窒素欠乏応答の鍵転写因子遺伝子であると示唆されたOsHHO4遺伝子をゲノム編集技術により破壊すると、oshho3変異体と同様の表現型を示すことを明らかにした。しかしながらoshho3変異体とoshho4変異体では表現型に異なる点も見られたことから、これらの転写抑制因子としての機能の差異に関する解析を開始した。
2: おおむね順調に進展している
NLP転写因子が硝酸センサーであることを示すなど大きな成果を挙げてており、また、他の解析も順調に進んでいる。
研究計画に大きな変更を加えることなく、研究課題を着実に進める。
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