研究課題
課題A) オートファジー関連タンパク質LC3は、オートファジー機能および非オートファジー機能があることが報告されており、未だその具体的な機能はわかっていない。本年度は引き続きSTK38とGABARAPファミリータンパク質の解析を行った。その結果、損傷リソソームがオートファジーの一形態であるミクロオートファジーによって修復され、STK38 とGABARAPs がこの経路の進行に必要であることを見出した。さらに、これらの因子の欠損はリソソームの損傷増加を伴い、細胞の老化亢進や個体の寿命低下を引き起こした(EMBO Reports 2023)。課題B) 小胞体ーミトコンドリア接触部位のプロテオミクスなどの方法で得られた隔離膜新生に関わる可能性のある候補因子について解析を行った。本年度はオートファゴソーム形成の初期ステップに必須なULK1タンパク質複合体が、オートファゴソーム形成部位に局在化する機構を明らかにした(リバイス中)。課題C) ミトコンドリアおよびリソソームがストレスを受けた際にTFEBがHKDC1 の発現を誘導し、HKDC1が損傷ミトコンドリアのオートファジーによる除去と同時に傷ついたリソソームの修復を促進することにより、細胞老化を抑制することを明らかにした(PNAS, 2024)。また、これまでに同定した選択的オートファジーの関連候補因子について解析を行ったところ、ゴルジ体選択的オートファジーの受容体を同定した(リバイス中)。課題D) 線虫を用いてMondoAの組織特異的な機能を解析したところ、神経系での働きが生殖細胞除去による寿命延長に必須であることを見出した。さらに、神経系のMondoAは神経のみならず他の組織のオートファジーの活性も細胞非自律的に制御し、これが全身の老化の抑制に重要な役割を果たすことが示唆された(PNAS, 2023)。
1: 当初の計画以上に進展している
課題A) 転写因子TFEBはリソソーム損傷に応答してLC3の脂質化依存的に核に移行するが、その意義は不明である。LC3の脂質化の意義を解析する過程で、損傷リソソーム膜がマクロオートファジーにより修復されることを見出した。また、STK38がDOK1のリン酸化を介してVPS4を損傷リソソームへリクルートし、さらにESCRT構成因子の解離を促進することによってマクロオートファジーを終結させることを明らかにした(EMBO Reports 2023)。課題B) ULK1タンパク質複合体は、オートファジーの開始段階でオートファゴソーム形成部位に集積することが必要だが、そのメカニズムは不明であった。本年度は、ULK1が脂質修飾を受けることによりオートファゴソーム形成場に運ばれることを明らかにした(リバイス中)。課題C) HKDC1は解糖系酵素として働くことが知られているが、この機能とは独立して、損傷ミトコンドリアの除去や損傷リソソームの修復を介して両者のクオリティーコントロールに必須の働きを持つことを明らかにした。HKDC1欠損細胞では機能低下したミトコンドリアや損傷リソソームの蓄積を伴い、細胞老化が進行することがわかった(PNAS, 2024)。また、選択的オートファジーの分子機構解明に取り組み、ゴルジ体特異的オートファジーの分子機構の一端を明らかにした(リバイス中)。課題D) Rubiconを上流で制御する転写因子MondoAを同定していたが、この因子の老化における働きについては不明であった。神経、腸、筋肉、表皮などの組織特異的ノックダウン線虫を用いた寿命解析から、MondoAの神経系での働きが生殖細胞除去による寿命延長に必須であること、神経系が全身の老化やオートファジー制御のコントロールセンターの役割を果たし、MondoAがその中心的役割を担うことを明らかにした(PNAS, 2023)。
課題A) LC3の非オートファジー機能について引き続き解析を行う。特に定量プロテオミクスにより同定したリソソーム損傷時にTFEBと相互作用する因子の解析や、RNA-seqによる下流解析により得た候補因子について解析を進め、リソソーム損傷に伴うTFEB活性化の意義を明らかにする。また、損傷リソソームのミクロオートファジーについてさらに解析を行う。さらに、LC3によるTRPML1のチャネル開口促進機構を理解するために、現在取り組んでいる両者の複合体の構造解析を続ける。課題B) 複数のスクリーニングから見出したオートファジー関連候補因子について、引き続き解析を続ける。小胞体局在因子が複数得られているため、オートファゴソーム形成部位である小胞体とオートファゴソームの相互作用について詳しく解析する。課題C) 現在までに得られた複数のリソファジー関連候補因子について、引き続き解析を進める。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件、 招待講演 10件) 備考 (1件)
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 121 ページ: -
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EMBO reports
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10.1126/scisignal.ade3599
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