研究課題/領域番号 |
22H04987
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土居 雅夫 京都大学, 薬学研究科, 教授 (20432578)
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研究分担者 |
佐藤 亜希子 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (80800979)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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キーワード | 体内時計 / G蛋白質共役受容体 / ステロイドホルモン / 睡眠覚醒 |
研究実績の概要 |
研究計画に従って、時間生物学に立脚した時間医薬イノベーションの創出という目標に向け、生物時計という新たな視点からの疾患治療法提案のための基礎研究を展開した。生体リズム調整薬を開発するためには、生体リズムを生み出す脳内の最高位中枢器官である視交叉上核(Suprachiasmatic nucleus: SCN)を標的とした研究が不可欠である。この課題に対し、SCNに発現するオーファン受容体Gpr176(Doi et al., Nat Commun 2016)が同じくSCNに発現する神経伝達物質NMU/NMSと協働してSCNの光位相応答の調節に関っていることを明らかにすることができた(Yamaguchi et al., Biol Pharm Bull 45:1172-1179, 2022)。またさらに、末梢組織疾患の治療に向けた研究においては、末梢時計の時計蛋白質リズムを漸次的温度変化により正常化する分子的機構の解明に成功し、本機構が皮膚の傷の治りに寄与することを明らかにした(Miyake et al., Cell Rep 42:112157, 2023; 科学新聞 2023/3/17)。蒸発亢進型ドライアイの原因となるマイボーム腺機能不全の治療に向けては、改良型透明化法による腺形態の可視化に成功した(Hamada et al., Ocul Surf 26:268-270, 2022)。皮膚の生体リズムが抗菌免疫を制御する仕組み、さらには、SCNが光に過剰に応答しないよう制限する仕組みの解明にも携わることができた (Tsujihana et al., PNAS, 2022; Matsuo et al., Cell Rep, 2022)。当初の計画どおりの探索研究を実施することができており、目標達成に向けて今後の研究展開に必要となる基礎的所見を得ることができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従って体内時計という視点からの新たな疾患治療法の提案を目指した調査スクリーニングを行った結果、研究が順調に進み、予想を上まわる良好な研究成果をあげることができた。すなわち、体内時計の最高位中枢器官である脳内の視交叉上核を標的とした探索研究において、オーファンG蛋白質共役受容体Gpr176と協調して働く神経伝達物質を見出し、その解析を通じてGpr176による体内時計の光を介した位相調節の可能性を見出すことに成功することができた(Yamaguchi et al., Biol Pharm Bull 45:1172-1179, 2022)。これに加え、さらに重要な研究成果として、本年発表のMiyake et al., Cell Rep誌において、体内時計遺伝子のmRNA上にある最小単位uORFとよばれる新たなRNA配列を見出し、これが体温に応じた細胞時計のリズム位相調節に必須であることを見出した。最小単位uORFによる時計蛋白質の発現調節は、体内リズムを介して傷の治りや褥瘡に関与することから臨床医学的にも重要な知見であると考えられる(Miyake et al., Cell Rep 42:112157, 2023; 科学新聞 2023/3/17)。マイボーム腺機能不全の治療・病態解明に向けては腺構造の脱落・萎縮・閉塞を明瞭に判定するための改良型眼瞼透明化法の取得に成功した(Hamada et al., Ocul Surf 26:268-270, 2022)。このように、当初の計画どおりの探索研究を実施することができており、時間生物学に基づいた疾患治療法の開発に向け、今後の研究展開の土台となる重要な成果を得ることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、当初の研究計画に従って時間生物学に立脚した時間医薬イノベーションの創出という目標に向け、生物時計を基盤とした新たな疾患治療法の提案のための基礎研究を展開する。特に、前年度までの研究調査によって良好な結果が得られつつある下記の課題に重点をおいて研究を進める。具体的には、体内時計の最高位中枢器官を標的とした研究において、昨年、オーファン受容体Gpr176が神経ペプチドNMU/NMSとの協調により体内時計の光位相同調にも寄与することを見出した(Yamaguchi et al., Biol Pharm Bull 45:1172-1179, 2022)。Gpr176についてはこれまでの研究成果も蓄積している(Sci Rep 2021; Nat Commun 2016)。本研究ではこれらの上に立ち、引き続き体内時計の中枢を標的とした時間治療薬の開発を目指す。さらに、本研究では、ヒトの早朝覚醒/朝型に最も強く相関するG蛋白質制御因子RGS16の解析を行ってきており(IJMS 2020; Nat Commun 2011)、これを基盤にSCN内のG蛋白質シグナル制御の研究を引き続き行う。末梢組織疾患の治療に向けた研究においては、昨年度及びこれまでに代表者が得てきた基盤データ①NMN点眼による加齢性ドライアイ症改善(Hamada et al., Ocul Surf 26:268-270, 2022; Sasaki et al., Nat Aging 2022)、②漸次的温度変化を介した時計蛋白質発現リズム活性化による皮膚創傷治癒改善(Miyake et al., Cell Rep 42:112157, 2023)、および③基礎体温のサーカディアンリズムの検出法(Simatani et al., PLoS One 2021)を軸に、当初計画に従い研究を進めてゆく計画である。
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