研究課題/領域番号 |
22H05005
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北川 進 京都大学, 高等研究院, 特別教授 (20140303)
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研究分担者 |
杉本 邦久 近畿大学, 理工学部, 教授 (00512807)
大竹 研一 京都大学, 高等研究院, 特定拠点准教授 (20834823)
Packwood Daniel 京都大学, 高等研究院, 准教授 (40640884)
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研究期間 (年度) |
2022-04-27 – 2027-03-31
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キーワード | 多孔性配位高分子 / 刺激応答性 / ナノ空間化学 / 錯体化学 / 半導体 / ガスセンサ / 連携機能 |
研究実績の概要 |
本研究課題が掲げる「相乗的インターフェースの空間化学」の開拓において、1. 高感度検出 2. 認識、捕捉、分離 3. 高効率分解・変換 の3つの研究細目を設定し、それぞれを実現することを目的とした。2022年度における研究では、特に1、2に注力して研究をおこなった。相乗的インターフェースを用いた機能発現の上で重要な目標の1つは、検出-極微量物質の検出のためのPCP/MOFハイブリッド系の創製である。そこで我々は、電導性の無機基板材料とPCP/MOFとの融合によるケミレジスタ特性の開発に取り組んだ。可視光応答性PCPナノ結晶と金属酸化物ナノアレイ薄膜を組み合わせることによって、爆発性危険物質(ニトロ化合物)の非接触型の超高感度リアルタイム検出にも成功した。これは、PCP結晶最表面で特定の爆発性微量物質を選択性を持って認識・補足・輸送し、金属酸化物表面でその電気抵抗値の変化として応答・検出して起こるものである。爆発性のニトロ化合物に対して~1 ppqのオーダーの検出限界を室温で実現できた(National Science Review, 9, nwac143, 2022)。相乗的インターフェース空間の実現のための重要な素子の一つとして、高選択的な認識、捕捉、分離機能を持つ空間の創出が重要である。我々は、PCP/MOFの細孔同士を繋ぐゲート部分に可動分子を導入し、局所的な分子運動をPCP内の物質拡散速度制御に利用することで、室温において軽水(H2O)と重水(D2O)の分離にも取り組んだ。我々の開発したPCPに軽水と重水の両方を含む蒸気にさらすと,軽水分子が優先的に細孔中に吸着され,その際の分離係数は最大212にまで到達した(Nature, 611, 289-294, 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は申請書で掲げた複数の技術的課題について順調に進展がみられている。特に、PCP薄膜を無機半導体材料上に成長させることによるケミレジスタセンサ材料の開発による爆発性微量物質の高感度検出(National Science Review, 9, nwac143, 2022)や、細孔内の局所的な動的“分子ゲート”の機構を利用することで多孔性材料を用いた水と重水の分離を初めて実現した(Nature, 611, 289-294, 2022)。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題が掲げる「相乗的インターフェースの空間化学」の開拓において、本研究では(1)高感度検出(2)認識、捕捉、分離(3)高効率分解・変換の3つの研究細目を設定した。(1)に関しては、本年度に得られた知見を基に、さらなる高選択性を兼ね備えた実用性の高いハイブリッド材料の実現に取り組み、社会貢献の大きな技術を確立する予定である。また、PCPと基板材料のインターフェース空間を主眼とした理論解明にも取り組んでいる。(2)に関しては、拡散制御機構を用いた分離技術の開拓については、従来では困難であった微量の有害物質の認識、捕捉、分離に展開できる基盤技術としての可能性を秘めており、今後はPCP/MOFの膜化等の検討を含め、さらなる研究展開を目指す。(3)に関しては、有害物をターゲットとした触媒機能の開発にも取り組んでおり、PCP/MOFの優れた機能性空間(分子認識、捕捉、貯蔵、輸送)を、電荷や電子およびフォトン、フォノンの変換機能格子(応答・適応・変換)を有するヘテロ材料と融合することによって高効率分解・変換デバイスを創成することに挑むつもりである。
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