本研究では、プレートテクトニクス開始の起源の一つである低強度の岩石がどのように形成されるかを解明することを目的とする。岩石中の結晶粒径減少による低強度のせん断帯形成メカニズムは未だ不明なところが多い。天然のせん断帯の観察からき裂も粒径減少に寄与していると推察されるが、その後の動的再結晶によってその痕跡は消滅するため、天然や実験における観察でき裂進展と動的再結晶の相互作用を定量的に評価することは難しい。そこで、数値シミュレーションの一つであるフェーズフィールド法により、岩石中に含まれるかんらん石のき裂進展と動的再結晶をモデル化し、き裂と再結晶の粒径減少と岩石強度変化に対する寄与を明らかにすることを試みる。採用期間の途中で採用を辞退したため、計画の一部しか実施できなかったが、下記の成果を得ることができた。 動的再結晶は岩石中の塑性変形中に生じるため、まず、かんらん石の塑性変形挙動を結晶塑性有限要素法によりモデル化し、シミュレーションを行った。シミュレーションは有限要素法のオープンソースコードであるMOOSEを用いた。MOOSEのソースコードを改良し、かんらん石の結晶塑性モデルの計算が行えるようにした。先行研究で提示された結晶塑性モデルにおけるパラメータを用いることで、実験的に得られたかんらん石の流動強度をMOOSEにおいて再現可能であることを確認した。 動的再結晶のモデル化・シミュレーションはMOOSEにおけるフェーズフィールドモジュールと前述した結晶塑性有限要素法を組み合わせて行った。結晶塑性有限要素法の計算で得られた転位密度の上昇に対応して、再結晶粒を形成するというプロセスを実現することに成功した。
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