本研究では細胞接着蛋白質であるN-カドヘリンが持つ複数の蛋白質-蛋白質間相互作用を区別して制御する技術の開発を行った。 蛋白質-蛋白質間相互作用を実測するため、表面プラズモン共鳴法を活用した相互作用測定系の構築を行った。センサー基板上にカドヘリン分子をアミンカップリング法で固定化すると、顕著な蛋白質活性の低下がみられた。そこで、ビオチン-ストレプトアビジンキャプチャー法での固定化方法へと切り替えるべくAvi-tagを付加した組換え蛋白質の調製およびビオチン化反応の進行を確認した。この系を用いれば蛋白質-蛋白質間相互作用を制御できる分子の探索・評価を進めることができる。 また、既に取得していたカドヘリン阻害剤に関して上記の系を用いた相互作用の阻害試験を行った。その結果カドヘリンが持つ3種類の相互作用の内、1種類のみを阻害している可能性が示唆された。分子動力学的シミュレーションと合わせることによって、その阻害メカニズムは相互作用中間体の構造を変化させることに由来するメカニズムであることが示唆された。 さらに、細胞レベルでの測定系の立ち上げも行った。本研究ではモデル細胞の他にカドヘリンを内在的に発現している細胞の利用も検討している。そのような細胞株を購入し、ウェスタンブロッティングによって目的のカドヘリン分子の発現を確認した。さらに免疫染色によって膜上に局在しているカドヘリン分子も確認する系の構築が進んでいる。上記のin vitroのアッセイ系においてて蛋白質-蛋白質間相互作用を制御できる分子が見つかれば、その分子を細胞に添加した際にカドヘリンの膜状の局在がどのように変化していくかを追跡できるようになると期待される。
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