生体模倣型双性イオンポリマーに着目したバイオ医薬品(治療用タンパク質・DNAアプタマー)の送達システムの構築に従事した。免疫原性が指摘されるPEG修飾の代替を目指し、双性イオンポリマー修飾の1)分子量と血中滞留時間の相関、2)双性イオン構造と体内動態の相関を解明する試みである。 今年度は、新たに設計したCTAを用いてpoly(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine) (PMPC)をRAFT重合で合成し、その末端修飾および側鎖修飾を行うことで、DNAアプタマーが1個~5個修飾された複合体の作製が可能となった。同様に、PMPCのホスホリルコリン構造を変更した、スルホベタイン構造のpoly(sulfo betaine)(PSB)およびカルボキシベタイン構造のpoly(carboxy betaine)(PCB)についても複合体を作製した。異なる分子量の双性イオンポリマーを修飾した結果、複合体の血中滞留時間の延長が観測された。これは分子量の増大による腎排泄の抑制に起因すると考えられる。また、DNAアプタマーの修飾個数を変えた複合体を用いて、血中滞留性および目的組織 (肝臓)への送達効率を評価した結果、DNAアプタマー3価修飾ポリマーは、DNAアプタマー単体および1価修飾ポリマーと比較して肝臓への集積率が高くなることが示唆された。肝臓への集積率が向上したことで、3価修飾ポリマーはより低投与量で、アゴニスト活性の指標の一つであるリン酸化ERKシグナルを観察することができた。したがって本研究では、双性イオンポリマー修飾および多価修飾を施すことでDNAアプタマーの体内動態を改善できることが示唆された。
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