研究課題
本研究計画での目標は、太古代のマントルの硫黄同位体組成の変動を解明して、太古代における地殻物質リサイクルを明らかにすることである。以前の研究において、ガス同位体比質量分析法での全岩粉末を用いた硫黄同位体分析により、ベリングエ地塊のコマチアイト試料は硫黄同位体をもち、太古代に沈み込んだ地殻物質のリサイクルに由来することを明らかにした。まず、この成果についての学術論文を出版した。また、以前の地質調査にて、より古い年代を示すピルバラ地塊で採集したコマチアイト試料について、薄片観察による岩石記載を行った。その結果、ピルバラ地塊の試料は大きく変質を受けており、変質の影響を避ける必要があることが判明した。そこで、コマチアイト試料中の初生硫化鉱物について、二次イオン質量分析法(SIMS)による局所分析手法の確立を目指した。まず、以前測定したものと同じ試料を用い、全岩・局所分析結果の比較を行うことを目的とした。偏光・電子顕微鏡を用いた硫化鉱物の記載を行ったのちに、SIMSでの局所同位体分析を行った。その結果、ベリングエ地塊の試料中の硫化鉱物は、全岩分析と同様のΔ33S値の傾向を持つことが明らかになった。二次イオン質量分析法での測定には、硫化鉱物の粒径が少なくとも20um以上であることが必要であり、粒径の大きな硫化鉱物を含まないコマチアイト試料の測定はできなかった。一方、関連する玄武岩試料については、1個の試料内にΔ33S値のバリエーションを持つことが判明した。負からゼロかけてのΔ33S値のバリエーションは全岩分析の値と調和的であり、粒径が小さく初生的な産状の硫化鉱物ほど低いΔ33S値を持つ傾向があった。これは、マントル由来の負のΔ33S値を持つ硫黄と、変質により外部からもたらされたゼロのΔ33S値を持つ硫黄の混合トレンドであると考えられる。本研究成果を学術雑誌に投稿予定である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Earth and Planetary Science Letters
巻: 598 ページ: 117826~117826
10.1016/j.epsl.2022.117826
Review of Scientific Instruments
巻: 93 ページ: 105103~105103
10.1063/5.0097883