本研究では立方晶ペロブスカイトBaZr0.5In0.5O2.75(BZI;乳白色)を水素雰囲気中で加熱すると大量の酸素欠損を持つ酸水素化物BaZr0.5In0.5O2.75-xHy(H-BZI;黒色)に転移することを見出した。 BZIおよびH-BZIはともに立方晶ペロブスカイト構造であり、水素加熱による格子収縮はわずか0.07%であることがわかった。熱重量測定から、水素加熱によってBZIは酸素欠損を生じ、酸素不定比は2.75から約2.25へと変化することがわかった。さらに中性子線回折のリートベルト解析およびIn-K XAFSの結果を合わせるとH-BZIの正味の組成はBaZr0.5In(II)0.5O2.25H0.5と表すことができ、水素加熱によってInは還元されその平均価数は2価となることが明らかになった。PCT測定からH-BZIでは水素ガスが直接溶解することが示唆された。水素化に伴う小さな格子定数変化から、BZI焼結体を形態および機械的強度を維持したままH-BZI焼結体に転換することができた。電気伝導率測定からH-BZIは乾燥水素中で電子ホッピング伝導を示し、また400 oC以下での温度依存性は小さく、10-2 S cm-1程度の比較的高い伝導率を示した。H-BZI焼結体を用いた水素ポンピング試験では、作用極側の水素濃度をモニタリングしながら正または負にそれぞれ分極したところ、正の際に水素濃度が上昇し反対に負の際には減少した。このことからH-BZI中ではH-イオンが伝導しており、H-BZIはH-/e-混合伝導体であると確認した。SOFCで一般的に用いられる還元処理により、Niサーメット多孔質支持体上に緻密な膜を形成したH-BZI膜デバイスを作製した。水素透過試験の結果、400 oC以上の温度域で、従来のプロトン伝導性セラミックス膜よりも高い水素透過度が確認された。
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