1. 脳のAPP669-711の産生機構解明 我々はこれまで、in vitroの実験系を用いて、ADAMTS4がAPP669-711の産生プロテアーゼであることを明らかにした。in vivoにおいても、ADAMTS4がAPP669-711の産生に関わるのかについて検討を行った。ADAMTS4ノックアウトマウスの血中では、野生型の場合と比較して、APP669-711量が30%ほど減少した。つまりADAMTS4は生体内でもAPP669-711の産生に関わることが示唆された。その一方で、残り70%の活性を担う別のプロテアーゼの存在も考えられたため、in vitroでスクリーニングを行ったところ、ADAMTS5が候補プロテアーゼにあがった。そこでADAMTS5ノックアウトマウスの血中のAPP669-711量を測定したところ、野生型と比較して有意な変化は見られなかった。今後は評価系を変更し、新たにスクリーニングを行うことで新たな候補プロテアーゼを見出していきたい。 2. 脳のAPP669-711の末梢血への排出機構の解明 月齢依存的にAβ蓄積が観察されるAPP/PS1マウスを用いて、生化学的解析を行ったところ、不溶性APP669-711が検出された。つまりAPP669-711は脳に蓄積している可能性が示唆された。また、脳で産生されたAPP669-711が血液脳関門を介して末梢血中に排出される可能性を検証するために、マウスの頭頂葉皮質にAPP669-711のマイクロインジェクションを行った。その結果、マウスの末梢血中からはインジェクションしたAPP669-711が検出された。すなわちAPP669-711は血液脳関門を経由して末梢血中に排出されている可能性が示唆された。今後は他の排出経路の関与、特にGlymphatic systemの関与の検討を行いたい。
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