研究実績の概要 |
本研究では、細胞同士の相互作用の中で 構築される細胞間ネットワークという観点から細胞の空間分布と治療奏効や遺伝子発現状態への関連を調べた。複数の免疫染色画像を重ねることで、CD8+細胞単体の密集や CD20+細胞へのリンパ球の集積が免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の効果をあげるという先行研究の知見に即した結果に加え、今まで報告の無かった細胞種の組合せ (CD68+とCD8+,PD-L1+細胞など) で、その空間分布がICIの奏効や予後に関わるものがいくつか示唆された。また、CD8+T細胞や、CD20+B細胞の分布の仕方が、ICIの奏功の見られた検体とそうでない検体で異なることも見受けられた。さらにBulkのRNA-seqの解析により、これらの細胞種が密集した腫瘍内では一部の間質細胞で特定のシグナルパスウェイの抑制(Apical junctionやPI3K-mTOR signal)が起きていることが考えられた。最後にこれら、細胞の集積とこれらのシグナルパスウェイの活性化との関連を調べるために、NanoString社によるGeoMXを用いて、腫瘍内の異なる位置に存在する細胞種それぞれ(T細胞とがん細胞)の遺伝子発現プロファイルを細かく調べた。結果は現在解析中である。本研究を進めることにより、未だ多くの患者で抵抗性が見られる免疫療法の効果を改善させるうえで、 新しい治療標的の解明につながることが期待される。
|