研究課題/領域番号 |
22K00006
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
増山 浩人 電気通信大学, 情報理工学域, 准教授 (30733331)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カント / バウムガルテン / マイアー / 『純粋理性批判』 / 哲学の「世界概念」 / 理念論 / 人倫の形而上学 / 形而上学 |
研究実績の概要 |
2023年度はカントの理念論と形而上学定義に関する論文を作成し、当初の研究計画4をほぼ完結させることができた。具体的な成果は以下の通りである。 1)昨年度から取り組んできたカントの形而上学定義に関する研究を継続し、いわゆる哲学の「学校概念」と「世界概念」の区別がカントの学の基礎づけ理論を理解するために決定的に重要なことを新たにつきとめた。その成果をまとめた論文「哲学の「世界概念」にしたがった形而上学の体系化――カントによるバウムガルテンの形而上学定義との対峙」をカント研究会例会で発表した。同論文では、「世界概念」にしたがって形而上学を「自然の形而上学」と「人倫の形而上学」に区分することによって、カントがバウムガルテンによる実践哲学の基礎づけを否定していたことを裏付けた。同論文の改稿版はカント研究会の機関誌『現代カント研究』第16巻に掲載される予定である。 2)『純粋理性批判』と1780年以降の形而上学講義録の分析を通じて、a. カントの理念論は「無条件者-条件づけられたもの」という存在者の選言的述語を扱う理論として解釈できること、b. それゆえ、カントの理念論は本来一般形而上学(存在論)で扱うのが適切であること、の二点を明らかにした。このことによって、「超越論的分析論」=一般形而上学(存在論)、「超越論的弁証論」=特殊形而上学(心理学、世界論、自然神学)という『純粋理性批判』に関する伝統的な解釈図式には大きな問題点があることを裏付けた。以上の成果をまとめた論文「「自然の形而上学」の建材としての「超越論的論理学」――カントはバウムガルテンの形而上学をどのように改革したのか?――」を日本カント協会第48回学会共同討議I「超越論的論理学の再検討 濱田賞の 15 年 第 2 回」で発表した。同論文の改稿版は日本カント協会の機関誌『日本カント研究』第25号に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2024年4月に東京都立大学哲学教室に転出することが急遽決まったため、2023年度の後半期は東京都立大学へ着任する準備(前任校の退職手続きや研究室の片づけ、東京都立大学での新たな研究室の設営や新年度からの新規開講授業の準備)に膨大な時間を費やさざるをえなかった。その結果として、2022年度の研究をもとにした研究計画3の成果論文の作成には全く手をつけることができなかった。それでも、研究計画4の成果論文2本を学会・研究会で発表し、これらの会の機関誌へ寄稿する権利を得ることができた。以上の理由から現在までの進捗状況は「2. おおむね順調に進展している」と判定する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は東京都立大学での新たな業務(新規開講授業の準備、学生指導)などに慣れるまで研究時間が減少することが予想される。そこで、2024年度は研究計画1に関する論文を日本ライプニッツ協会で発表することを、2025年度は研究計画3に関する論文を東京都立大学哲学会で発表することを最低限の目標とする。その上で、この2年間の残りの時間で研究計画2に関する論文を作成し、しかるべき学会誌に投稿することも目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、主に①東京都立大学への転出に伴う研究時間の減少によって海外渡航の機会を逸したこと、②新アカデミー版カント全集の主要巻が2023年度に発売されなかったこと、という二つの理由による。余剰金は新アカデミー版カント全集をはじめとする文献購入や学会発表・資料収集のための旅費に使用する予定である。
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備考 |
https://researchmap.jp/hm_1258
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