研究課題/領域番号 |
22K00028
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
黒川 英徳 金沢大学, GS教育系, 准教授 (30710230)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 実数 / 構成的数学 / 内包論理 / ラッセル-マイヒルのパラドックス / フレーゲ / ラッセル / チャーチ |
研究実績の概要 |
今年度は以下のような研究を行なった. 1)本研究では,本来直観主義解析学において不可欠に現れる内包性の概念について研究することが目的の一つになっているが,本年度はもう少し広く実数の概念に関する内包性と外延性の関係について検討するため,構成的解析学においてはデーデキント実数とコーシー実数が一致しないという事実に注目した.古典論理上に(あるいはそれより弱いが十分に強い何らかの原理を使って)これらを定式化し直すと,これらは外延的に一致する.この現象は我々が外延的にのみ或る概念を特徴づける場合にはある種の概念的認識を欠いてしまうことになる,言い方を変えると実数の概念は完備性を保持することを仮定した場合にも内包的には様々にという可能性を表しているという洞察を得た.(なお、この研究は他の科研費の研究課題と重なる側面をもつ.) 2)フレーゲ=チャーチ流のSinn(あるいはsense)の概念を明示的に表現しうる論理体系を定式化することはこの研究課題の重要なトピックの一つである.そのための準備作業として本年度はフレーゲの論文,著作,またフレーゲ研究の論文,研究書(Dummett, Perry, Klement,Tichy等)などを再読することを行なった.この準備作業は我々の数学の理解を表現(represent)するような形式体系がもっていなければならない特性を特徴づけることを差し当たりの目標にしている.つまり,数学の言語に関する言語哲学を構築し,その成果の上に論理体系を構築するということである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究全体の最終目的は,直観主義的解析学及び,内包論理の分野において,哲学的な概念分析を行い,それに基づいて何らかの数学的成果を得ることにある. 現在までのところ,直観主義解析学の基礎に関する文献,歴史研究はあまり進んでいない. また新たな内包論理の構築という側面においては現在の研究の段階はフレーゲ,ラッセルのアイデアに関する文献渉猟による再検討という段階であり,まだ本格的な形式体系の構築に入ることができていない.これらの点から見て,現段階での本研究の現段階での進捗状況はやや遅れていると考えざるを得ない.
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今後の研究の推進方策 |
今後行わなければならない研究は以下の通りである. 1)数学的理論に関する我々の理解を十全に形式体系において表現しうる論理体系がもっていなければならない内包的性質とはどのようなものなのかをフレーゲに遡って検討する.この段階でフレーゲ研究という枠で論文を準備する.2)その上で,フレーゲのSinnの概念に準じるような内包的性質をいかにして形式的に表現するかを, Moschovakis, Muskens, Tichy, Klement, Horty, Cresswellらの研究を参考して検討する.3)ラッセル流の命題概念を中心にした意味論と比較する(そのために,ラッセル本人の論文,著作,またラッセル研究の文献を検討する).4)本研究ではより形式的な探求に入ると,ラッセル-マイヒルのパラドックスとして知られているパラドックスを検討せざるを得ない.5)その上で,我々自身の観点からフレーゲのSinnの概念を表現することのできるだけの表現力をもつ内包論理を定式化する. 尚,6)直観主義的解析学に関してはまず何よりもクライゼルの未発表文献をさらに読み込む必要がある.7)その上で,クライゼルの行なった,ブラウワーの「直観」に基づく深遠だが理解困難な議論を,見通しのよい形式的議論によって再定式化をinformal rigourの適用例として記述する.8)このようにしてさまざまな記述の仕方を許す直観主義的解析学には,「内包性」概念を適用して議論することが不可欠な例が数多くあり,この研究ではそれらについてさらに議論することが望ましい.
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックによって,今回の科研費の前に受けていた科研費の期間が延期されたため、本研究の科研費を使用する必要がなかったため,今年度使用しなかった助成金を来年度の助成金として使用することになった. 物品の購入,および旅費として来年度に本来請求する予定していた金額と合わせて,よりアクティブに研究活動を行うことによって使用する予定である.
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