研究課題/領域番号 |
22K00041
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 紀子 聖心女子大学, 現代教養学部, 講師 (20453657)
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研究分担者 |
冨原 眞弓 聖心女子大学, 現代教養学部, 名誉教授 (70227635)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シモーヌ・ヴェイユ / 哲学教育 / 労働者教育 / 労働における霊性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はシモーヌ・ヴェイユ(1909-1943)の労働者教育の変遷をたどり、ヴェイユの思想全体と労働者教育の関係性を明らかにすることにある。なかでも、本研究の特徴は、教育を受ける側である労働者に主軸を置き、ヴェイユと交流のあった労働者の語りや作業そのものに着目して課題解明を進める点にある。この研究目的を果たすために、①ヴェイユがたずさわった工場労働と農業労働の解明、②農民哲学者ティボン(1903-2001)により出版された『重力と恩寵』とその元であるヴェイユの「雑記帳」(以下「カイエ」)の比較研究のふたつに分けて研究を進める計画を立てた。 上記の研究計画①に対して2022年度においては、ヴェイユが工場就労に従事していた頃の工作機械を所蔵する国内の博物館を訪問し、実際に工作機械を見て回った。これにより、ヴェイユの「工場日記」内で示される工作機械や部品の大きさや重量および工場そのものの規模感を確認することができ、ヴェイユの労働者教育の対象像および射程がより明確になった。しかしながら、22年度の調査だけでは解明には到底至らないため、23年度も当時の工場就労に関する調査を継続し、当時の工場就労における作業の詳細を調査したい。 研究計画②に対しては、研究分担者が2017年の『重力と恩寵』校訂・編訳時にすでに特定した『重力と恩寵』と「カイエ」の異同箇所を整理しデータ化する作業を研究分担者とともにおこなった。これにより、23年度から本格的に比較研究に入る準備をととのえることができた。 くわえて、22年度はこれまでの研究成果と本研究テーマを照らし合わせ、2本の論文を執筆・公開し、本研究の意義および前提となる背景をまとめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ヴェイユ研究ではすでに研究の蓄積がある工場労働にくわえて、ヴェイユが晩年にたずさわった農業労働まで研究対象を広げ、ヴェイユの労働者教育の変遷を解明し、ヴェイユの思想全体における労働者教育の綜合的な分析を図ることを最終目的としている。 研究対象を広げたことにより、工場労働と農業労働の両方へのアプローチが必要となることから、両者各々に個別の研究計画を立て、細かい研究工程を作成することで着実に研究が進むように対処している。2022年度は計画した工程をこなし、綜合的な分析にとりかかる準備が順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度においては、当時の工場労働の作業詳細を解明するための調査を引き続き実施するとともに、ヴェイユと直接交流があった労働者の書簡、日記、インタビュー等の文献研究をはじめる。くわえて、ヴェイユの「カイエ」を編纂したティボンによる「カイエ」解釈をはじめ、『重力と恩寵』およびティボンのヴェイユ研究における位置づけの再検討にとりかかりたい。 研究の工程が多いため、研究分担者と役割分担を確認しながら、確実に研究を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に工作機械の博物館を訪問するために3日間を予定していたが、降雪のため博物館が早めに閉館したことから旅費が予定よりも残ったため、次年度使用額が生じた。 2023年度は資料作成のための物品費、資料整理のための人件費、および調査のための旅費に助成金を使用したい。
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