研究課題/領域番号 |
22K00096
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐藤 正幸 山梨大学, その他部局等, 名誉教授 (90126649)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 歴史思想史 / 歴史概念 / 比較思想史 / 歴史理論 / 歴史哲学 |
研究実績の概要 |
2023年度は「日本型歴史教育における規範的要素と認識的要素」の研究を行った。確実で揺るぎない過去を教える東アジアの規範的歴史教育と、歴史には様々な解釈がありその解釈によって多様な過去が考えられるという西洋型の認識的歴史教育とを比較し、両者の得失を明確にした。 具体的には、日本の歴史教育における歴史年表の使用に焦点を当てて研究を遂行した。研究代表者がこれまで歴史教育の現場を研究調査した結果は、欧米の学校では歴史年表はほとんど使用されていないのに対し、東アジアの学校における歴史教育では、歴史年表が多用されている。この歴史教授法の違いを手掛かりに、規範形成型歴史教育と認識型歴史教育という視点から研究を遂行した。 本年度の研究成果は、英文論文1件、国際学会での研究発表2件、国内学会での研究発表1件の計5件である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、研究成果の一部を、英文論文として国際研究雑誌で公刊し、ロンドン大学とタリン大学で開催された国際学会で研究報告を2件行うなど、研究全般は順調であった。ただし、共編著書として2023年度中に公刊される予定であった Masayuki Sato, "East Asia and Its Tradition of Historical Thinking." が、他の著者の事情により出版が遅延しているため、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は「日本型歴史概念が内包する認識的要素と規範的要素の解明」である。最終年度である令和6年度は、現代日本の歴史研究が、歴史理論的に拠って立つ「認識方法としての歴史」と「規範形成としての歴史」の、そもそもの起源について比較研究を行う。東アジアにおいては正史が、2000年にわたって、現在に至るまで編纂され続けている。その編纂目的は、「我欲載之空言、不如見之於行事之深切著明也。」という、司馬遷が引用する孔子のこの言葉が、東アジアにおける「規範形成としての歴史」の論拠を明示している。ところが、啓示宗教を持つ西洋文化においては、『旧約聖書』は東アジア的視点から見れば歴史書そのものであるのに、信仰の書として読まれている。なぜこのような認識行為の差異が生ずるのかについての解明する。そして、「東アジアでは人間存在を歴史によって義とするのに対して、啓示宗教を持つ西洋文化では、人間存在を神によって義とする。両文化におけるこの義認のあり方の差異が、東アジアと西洋における歴史叙述の役割や形式の違いを生じさせている」という仮説を検証し、海外の研究者との討議を経て、その成果を国際学会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度末に予定していた国際学会が相手方の都合により延期となったため。 2024年度内にこの延期された国際学会が開催される予定なので、本使用額を出席経費に充てる計画である。
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