研究課題/領域番号 |
22K00100
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
立木 康介 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70314250)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 家族 / 非(あるいは脱)エディプス化 / 思想史 / 精神分析 / セクシャル・ダイヴァーシティ / ケア / 同性婚 / モノガミー |
研究実績の概要 |
ヨーロッパにおける「家族思想」のターニング・ポイントを印づけるように思われるドゥルーズ&ガタリの『アンティオイディプス』(1972)を下敷きに、その出版からの半世紀に欧米を中心に巻き起こった「家族」形態の急速な多様化(そのアウトラインは「脱オイディプス化」と呼びうる)と、それがもたらす「家族」概念の変化を、ひとつの思想的課題と捉え、精神分析を基軸とする思想史的パースペクティヴのもとで、21世紀の市民社会にふさわしい「家族」の再定義への道を拓くことを目的とする本研究は、1/ 性的アナーキズムとしての精神分析理論(これは本研究全体を方向づける立場でもある)、2/ 家族(への)回帰の論理の解析、3/ 「ケア」理論における家族論の可能性の追求、4/ 「同性婚」問題のラディカルな解明、5/ モノガミーの歴史=文化=心理的根拠を探る試み、というサブテーマに沿って、現代文明における「家族」の変容と、それがヒューマニティにもたらしうる帰結を考察する。2022年度は、このうち、1、2、5について、参照すべき文献・資料のコーパスを確定するための調査を日本とフランスを中心に行い、4について、国内外の最近の動向を、関連する諸研究および時事的な諸情報の両面からフォローする作業をスタートさせた。また、特定のサブテーマに限定されることなく、むしろそれを越え出る範囲で、現代社会における「家族」の諸問題を学び、捉え直すために、京都大学人文科学研究所の共同研究「家族と愛の研究」(冨山一郎班長)と連携するとともに、そこから得られる諸情報を本研究の考察に活かすことがめざされた。それは同時に、本研究が必要とする学際的アプローチ(歴史学、社会学、法学、心理学、生殖医療研究、児童文学研究などの視点をとりこんだ)に資する取り組みであり、本研究の思想(史)的課題を他分野の諸研究とタイアップさせる重要なステップでもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に問題はない。ただし、上記の五つのサブテーマをめぐる研究・調査を均等な速度で進めることはできていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後も上記の5つのサブテーマに沿って、資料収集・調査・考察を進める。本研究に奥行きをもたせるため、京都大学人文科学研究所の共同研究「家族と愛の研究」との連携も大いに役立てたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、海外での資料収集・調査の計画を、コロナ禍の状況を睨みながら立てざるをえなかったが、その結果、報告者自身が代表を務める他のプロジェクト(コロナ禍の影響で研究期間が延長されていた)と同一の出張で用務を遂行することになった。そのことで、かえって渡航費・滞在費の一部が圧縮され、執行金額に余裕が出た。 来年度は、今年度の残額を、今年度やや手薄だった資料(とりわけ映像資料)の購入と、老朽化した研究機材の新調に充てつつ、今年度同様、海外での資料収集・調査を行い、予算を執行していく。
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