研究課題/領域番号 |
22K00106
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
淵田 仁 城西大学, 現代政策学部, 助教 (00770554)
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研究分担者 |
飯田 賢穂 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (90806663)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | デジタルヒューマニティーズ / 草稿研究 / ジャン=ジャック・ルソー / 思想史 |
研究実績の概要 |
2023年度は、昨年度整備したルソーの『社会契約論』草稿(通称「ジュネーヴ草稿」)のデータを用い、研究協力者の中村覚氏(東京大学史料編纂所)とともに電子校訂版のプロトタイプを作成した。これまでは手稿の情報を行ごとにデータ化していき、デジタル再現していた。しかし、その手法では再現性の限界を感じた。ゆえに、一単語ずつに値を設定する方式を採用した。 この手法によって、デジタル化を進めるためには作業ツールが必要になる。ゆえに、入力を容易にする作業ツールも開発し、ルソーの筆跡を通時的に再現することが可能となった。 『社会契約論』草稿だけではなく『エミール』の草稿にも研究対象を広げた。『エミール』の草稿は3種類現存しているため、上記で示した再現ツールを使う事で3種類の比較も可能となる。 2023年度に開発した手法やその理念等については情報処理学会の「人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2023)」にて発表した。その後、ルソーの草稿現物の情報を得るべくフランスパリの国民議会資料室に保存されているルソーの草稿の写真撮影をおこなった。その際にはリヨン高等師範学校のデジタルヒューマニティーズ研究所でも本年度の成果を報告し、意見交換を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、実際のデジタル校訂版のデモの作成を完了させ、その成果を学会や研究会で報告する事ができた。技術的問題も多いが、今後の改良によって改善が予想される。また、リヨン高等師範学校デジタルヒューマニティーズ研究所の研究者らとも交流する事ができ、本研究を国際的なものにするきっかけを得る事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の課題はまずルソーの手稿を取り扱う際の権利の問題である。ルソーの手稿画像等を公開するには所蔵先の許可が必要となる。本研究の目的のひとつは、デジタル手稿校訂版の入力や注釈などを誰でも利用可能な状態にすることであるが、そのためには権利関係をクリアする必要がある。2022年度にはジュネーヴ図書館、ヌーシャテル大学図書館、2023年度はフランス国民議会資料室に赴き、関係者と関係を構築する事ができた。実際にデータをWeb上に公開するためにはさらなる調整が必要になると思われる。今後はこの点を意識し作業に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は国外での調査研究を実施しない予定であったが、フランス国民議会資料室の閲覧が可能となり、かつリヨン高等師範学校のデジタルヒューマニティーズ研究所との繋がりができたため急遽渡仏することになった。その結果、次年度使用額が発生することになった。
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