• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

ソシュールと東洋のトポス:「言語一般」構築の対蹠点として

研究課題

研究課題/領域番号 22K00109
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

小野 文  慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 准教授 (00418948)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワードソシュール / 東洋学 / 一般言語学
研究実績の概要

初年度である2022年度は、1)翻訳面、2)調査面、3)考察面で進展があった。
1)翻訳に関しては、フルルノワ著『インドから火星へ』の翻訳を進め、その一部を紀要に掲載したことである。現在、5章から6章を翻訳中であるが、特にこの2章は「火星語」を扱っており、話し言葉とともに書き言葉の面でも火星語が出現してきたところである。またバンヴェニスト著『最後の講義』の後半の「言語とエクリチュール」の関係を扱う部分の翻訳に取りかかり、書記体系と言語との関係性について知識を深めることができた。19世紀末~20世紀の「一般」言語学者たちが考えたメンタルマップを知るためにも、また神秘的な東洋の書と文字という観念がいかに言語学成立に関わったかを検討するうえでも、バンヴェニストのこの著作は重要であり、ひきつづき読解・検討していく必要がある。
2)コロナ禍がようやく明け、フランスに調査出張に行くことができた。渡仏中はソシュール関連だけでなく、異言やアール・ブリュットに関する資料も閲覧することができた。また国内の調査では、ジュネーブ大所蔵のソシュール草稿資料の大部分を複写したと言われる故小松英輔教授の大量の資料を学習院大学の資料室の奥に見つけ出すことができた。内容に関しては、これから精査する予定である。
3)慶應義塾大学言語文化研究所所轄の研究会「声とテクスト」研究会でソシュールの異言とバンヴェニストの言語思想について発表を行った。また他の研究員の発表から、本研究とも関わりの深い「誓い」「叫び」「言語と非言語の境目」「発話とarticulation」等のテーマに関して学びを得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上の研究実績の概要に述べたように、2022年度は翻訳作業に力を入れただけでなく、そこから多くの学びを得、研究会で発表できたというのが大きい。また資料調査の面でも、国内で最大規模と考えられるソシュールの草稿コピー群を発見できたことで、ジュネーヴに赴かずに閲覧できる資料があることが分かり、かなり時間が節約できるのではと考えている。

今後の研究の推進方策

ひきつづき『インドから火星へ』の翻訳を進めるとともに、上述したバンヴェニストの『最後の授業』中の「言語とエクリチュール」に関する部分に関しても、翻訳して検討していきたい。
また当時の東洋学の状況を知るうえ欠かせない19世紀末から20世紀初頭における学術誌・研究者の書簡等の所在を確認するために、パリ言語文化研究所のアーカイヴを探索したい。ソシュール学においては、ジュネーブ大学図書館やソシュール家の資料は探求しつくされているが、ソシュールがパリで過ごした10年間の資料については、まだ調査されつくしてないのではと考える。ソシュールが一時身をおいた、パリ言語文化研究所やパリ高等研究院等の場所でどれだけ資料が出てくるか、パリ在住の研究者にも協力を仰ぎ、探索してみたい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍のため、海外からの書籍購入に予想以上に時間がかかり、予定どおりに購入計画が進められなかった。また海外図書室自体の閉鎖等もあり、資料収集のための費用が使用できなかった。次年度は、この額を使用しつつ計画的に資料収集を進め、研究に活かしていくつもりである。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] テオドール・フルルノワ著『インドから火星へ』 --- 第5章 火星の輪廻(2)2022

    • 著者名/発表者名
      小野 文(訳)
    • 雑誌名

      慶應義塾大学日吉紀要 フランス語フランス文学

      巻: 74号 ページ: 53-78

  • [雑誌論文] テオドール・フルルノワ著『インドから火星へ』 --- 第6章 火星語(1)2022

    • 著者名/発表者名
      小野 文(訳)
    • 雑誌名

      慶應義塾大学日吉紀要 フランス語フランス文学

      巻: 75 ページ: 117-141

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi