研究課題/領域番号 |
22K00123
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
吉川 順子 京都工芸繊維大学, 基盤科学系, 准教授 (90732032)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フランス / 異文化受容 |
研究実績の概要 |
研究対象とする欧文文献で使用されたいけ花の作品図の出典について、昨年度に閲覧した『花道古書集成』『続花道古書集成』や国書データベースなどには収録されていないいけ花の伝書を閲覧あるいは現物購入して調査を進めた結果、昨年度の約8割(約370図)から増えて、約9割5分(約440図)まで特定することができた。また、未だ特定に至っていない作品図についても共通する加筆・脚色の傾向が見出せたので、今後はそれを念頭に置いてさらに調査を行い、全ての作品図の特定を目指す。上記の調査結果を踏まえて、今年度は研究対象とする欧文文献のうち19世紀後半にジャポニスムの中心地であったフランスでいち早くいけ花の作品図に着目して掲載した文献について、その作品図の出典を公表し、当時の伝書蒐集の実態を明らかにすると共に、いけ花の作品図を使用した意図を分析、その後のいけ花理解やフローラルアートにおけるいけ花受容への影響までを考察する論文を執筆した。これは2024年度に雑誌論文として投稿する予定である。また、これまでに行ってきた欧米諸国におけるいけ花受容史の研究のうち、特にいけ花に関する言説や表象の概要をまとめ、ワルシャワ大学東洋学部から刊行されたMalgorzata Dutkaの編集による書籍IKEBANA. dzieje, mysl, percepcja(『いけ花:歴史、思想、認識』)に論文"RECEPCJA IKEBANY W KRAJACH ZACHODU”(「欧米諸国におけるいけ花受容」)を執筆し、いけ花を通じた日欧文化交流の歴史の詳細を国際的に周知させることに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象とする欧文文献で使用されたいけ花の作品図の出典の特定がほぼ予定通り進み、その成果を公表する目処もついたため。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、研究対象とする欧文文献のうちイギリスとアメリカの文献で使用されたいけ花の作品図の出典を明らかにし、その特徴を花材・花器・花形などの点から分析して、文献の内容との関連性を検討する。また、その成果を、2024年10月に所属大学で開催する国際シンポジウムで発表する予定である。同シンポジウムでは芸道史の研究者、日本・アジア・ヨーロッパのいけ花交流史の研究者、いけ花に関連する美術分野の研究者による研究発表、およびいけ花の実作者による作品展示と解説が行われ、本研究にとって多方面から示唆を与えるものになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の文献のデジタル化が進んだことや、参加を予定していた学会がハイブリット開催になったことで、旅費がかからなかったことによる。また、翻訳ツールが進化したことで、文献理解のための翻訳を依頼する必要がなかったこともある。次年度使用額は、今年度に引き続き、どの公的機関にも所蔵されておらず現物入手が本研究にとって有益と思われるいけ花の伝書の購入や、2024年度に所属大学で開催する本研究に関連した国際シンポジウムの準備費用などに充てる予定である。
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