研究課題/領域番号 |
22K00131
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
山本 成生 上智大学, 文学部, 准教授 (90588815)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | グレゴリオ聖歌 / アヴェ・マリア / マリア崇敬 / 東方教会 / キリスト教 / 典礼 / 音楽史 |
研究実績の概要 |
本研究は、まとまったレポートリーをもち、「楽譜」による再現演奏が可能な西洋最古の音楽とされる「グレゴリオ聖歌」の成立状況を、現存する写本史料の詳細の分析と学際的なアプローチから解き明かそうとするものである。 本年度の最大の成果は、グレゴリオ聖歌の著名な楽曲の一つである〈アヴェ・マリア〉Ave Maria に関して考察を行い、その成果を論文として発表できたことにある(『上智史學』67号、35-49頁)。この論文ではこれまでにない詳細な文献学的考察により、上記の楽曲の起源を東方教会の典礼に遡るとする諸説との史料的根拠を批判した。その結果、『新カトリック大事典』の記事など現在の定説に対して、いくつかの重要な修正案を提示することができたと思われる。 その他には、西洋中世音楽史における重要な研究動向の紹介(『西洋中世研究』14号、227-228頁)や、西洋中世の文化の魅力を広く伝える書籍への寄稿(『西洋中世文化事典』2024年出版予定)を行った。また、我が国の2022年度における西洋中世史研究全体の学界動向に関する記事も著した(『史学雑誌』132編5号「回顧と展望」号[2023年6月発行予定])。 ヨーロッパにおける史料調査については、新型コロナウィルス感染症の世界的流行のために困難を極めたが、2023年3月に約2週間の日程で実施することができた。フランスのディジョン、ヌヴェール、クレルモン=フェランの県文書館を訪問し、司教座聖堂参事会に関連する手稿史料を調査し、その一部をデジタルカメラに収めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症関連の理由の他に、研究代表者の所属が変更され、新しい研究機関での職務に慣れるのに時間がかかったという理由がある。ただし、次度は在職2年目となり、研究遂行のための環境が整いつつあるため、問題はないと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
〈アヴェ・マリア〉に関する上記の成果を踏まえ、初期中世から16世紀にかけての動向を考察し、同様に論文として刊行する。またこの研究は単なる楽曲分析に留まらず、「マリアの音楽」という胞芽的な研究テーマを含んでいるため、日本音楽学会を始めとした代表的な学会で口頭報告をおこない、研究コミュニティーに広く問いたい。 「グレゴリオ聖歌」という名称の由来である教皇グレゴリウス1世の関与――または後代におけるその政治・文化的利用――については、本研究の中心的な課題であるため、本年度中に一定の成果を著したいと考えている。 史料調査については、フランスの司教座聖堂関連のものを引き続き検討する予定である。
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