研究課題/領域番号 |
22K00169
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
宮治 昭 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (70022374)
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研究分担者 |
上枝 いづみ 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (40727880)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ガンダーラ美術 / 仏伝美術 / 大乗仏教と美術 / 釈迦信仰 / 弥勒信仰 / 阿弥陀信仰 |
研究実績の概要 |
本研究は今迄に行ってきた、主に科学研究費補助金による海外(インド・パキスタン・欧米)のガンダーラ彫刻の調査によって収集した大量の写真資料のデータ化と、そのデータの整理を重点的に行っている。主な所蔵先として、インドのアラハバード博物館、コルカタ・インド博物館、チャンディガル州立博物館、ニューデリー国立博物館、マトゥラー博物館、ラクナウ博物館、旧プリンス・オブ・ウェールズ博物館、パキスタンのラホール博物館、イギリスの大英博物館、ヴィクトリア&アルバート博物館、フランスのギメ東洋美術館、ドイツのベルリン国立アジア博物館、アメリカ・カナダのアメリカ自然史博物館、クリーヴランド美術館、サンフランシスコ・アジア美術館、シカゴ美術館、ハーバード大学フォッグ美術館、パシフィック・アジア美術館、フリーア美術館、ブルックリン美術館、ボストン美術館、ロイヤル・オンタリオ美術館、ロサンゼルス・カウンティ美術館などである。 これらの所蔵別の作品を仏陀像、菩薩像、本生・仏伝図、守護神、供養者、装飾、その他に分類して整理し、データベース作成の基礎作業を行っている。研究としては特に仏伝図と大乗仏教美術の関連に関し、従来、「舍衛城の神変」に同定されてきた一群のガンダーラ彫刻が、初期大乗経典に見られる「仏陀の大光明(放光)の神変」と関係が深いことを指摘し、大乗の仏身観・菩薩観・世界観が現れていることを、経典記述と図像とを比較しつつ、その様相を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はパキスタン・インド、欧米、日本に散在している大量のガンダーラ彫刻の調査の実績に基づき、それらのデータベースを構築すること、および仏伝美術とそれに関連する諸問題の研究を進展することを目的とする。本年度は昨年度に続き、パキスタン・インド・欧米と日本の博物館所蔵のガンダーラ彫刻の画像データ化、およびその資料整理(個々の作品の基本データの打ち込み)を進めた。 研究に関しては今迄に整理されたガンダーラの仏伝美術のデータと研究成果を基礎として、弥勒信仰、および大乗仏教に関わる作例のデータを網羅的に整理し、(1)三尊タイプ、(2)発出タイプ、(3)楼閣タイプ、(4)蓮池タイプに分類し、それらをもとに経典との照合、考察を行った。特に仏三尊像、半跏思惟像、弥勒信仰、阿弥陀信仰がガンダーラ美術において生成することを明確化することが出来たことは大きな成果といえる。それらに関する研究成果は4編の論文として刊行した(業績目録参照)。
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今後の研究の推進方策 |
ガンダーラ美術の作品はパキスタン・インドはもとより世界中に散在しており、日本にも多量に所蔵されている。今後、日本での所蔵作品の調査も課題で、所蔵者との交渉を行って進めたい。各地に散在しているガンダーラ美術の彫刻は大量で、また図録や美術書に収録されている作品をスキャンして加え、それら全体のデータベース構築に向けての整理作業も未だ多くを残しており、積極的に進める。 研究に関してはガンダーラの仏伝美術の中で、釈迦と天上の神々との交流を物語る場面(托胎霊夢、灌水、梵天勧請、降魔成道、三道宝階降下、帝釈窟説法など)を重点的に取り上げ、仏教がバラモン教の神々をどのように取り入れたかを検討する。また、ガンダーラ美術がインドの土壌の中で、ギリシア・ローマやイランの神々・宗教文化を受容し、融合することによって、インド内部の仏教美術とは異なる展開を成した、その様相を明らかにする研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が半年間育休のため、分担金の使用に残額が出たため。
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