研究課題/領域番号 |
22K00175
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研究機関 | 公益財団法人大和文華館 |
研究代表者 |
仁方越 洪輝 公益財団法人大和文華館, その他部局等, 学芸部員 (20937271)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 近世絵画 / 円山派 / 四条派 / 呉春 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本絵画においてあらゆる種類の筆線を含む諸様式が並立した18世紀から、大勢では筆線の解体が進行しながら近代へと突入していく19世紀にかけての筆線に対する意識の変遷を、円山・四条派を軸として具体的に明らかにすることを目指す。18世紀後半は多彩な様式の並立した時期であり、各絵師が様々な筆線を使用していた。一方で、起伏を抑えた筆線を多用する円山応挙が登場し、応挙様式を受け継いだ呉春も筆線の存在感を減少させていく。後に円山・四条派と呼称された彼らの一門は大きな勢力となり、その画風も広く受容された。本研究では、円山・四条派の主要な活動地域であった京阪を中心として、江戸時代中後期の絵師が筆線に対してどのような意識をもっていたのか、絵画作品や諸文献から検討する。 今年度は、円山・四条派関連の文献資料の一種として、各絵師の活動状況や得意とした画題、交流関係などを知る材料となりうる書画展観会目録の情報を整理した。加えて、展観会をめぐる情報の収集も行い、呉春および景文の没後に彼らの追薦を目的とした展観会が、幾度も四条派絵師たちによって催されていた状況が確認された。なかには二日間の開催で二百人近くもの来訪者がいたという展観会もあり、呉春作品が愛好されていた様子が改めて浮き彫りになった。また、様々な形式や地域での活発な書画展観会の開催が四条派隆盛の助けとなったともみられ、彼らの画風が広く受容された社会的要因のひとつが具体的に明らかとなった。この成果は「呉春と景文の追薦展観」として公表した。(『仏師と絵師-日本・東洋美術の制作者たち-』p.383-401) また、呉春作品に加え、筆線に対する高い興味を有していたと知られる呉春門人の小田海仙など四条派絵師の作品調査を踏まえた報告を行った。さらに、本研究の対象となる時代の画論書や随筆などの整理も並行して進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
呉春は18世紀後半にかけて活躍し、画業を通じて徐々に筆線の存在感を減少させていった絵師であるため、本研究において極めて重要な存在である。今年度は、各所蔵者のご厚意により、呉春の画業後半期における基準作である寺院障壁画などの調査を行うことができた。また、文献資料の一角を占める展観目録の整理を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、現在刊行されている画論書や随筆類からのデータ収集を進めて、思想的背景の状況を確認していく。あわせて、呉春や四条派の作品調査を引き続き行い、作品や絵師ごとの詳しい状況の分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の作品調査では比較的近距離での移動が多く、遠方での調査を行うことができなかった。また、手近にある書籍に基づいた情報収集が多かったため、書籍購入を見込んだ予算を使い切ることができなかった。次年度には遠方での作品調査に加え、必要な書籍の購入も行っていく。
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