研究課題/領域番号 |
22K00177
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
野田 由美意 北見工業大学, 工学部, 教授 (00537079)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 若きラインラント / ナチス時代からその直後 / 美術館・画廊の歴史 |
研究実績の概要 |
令和4年度に引き続き、ナチス時代デュッセルドルフの美術館における「若きラインラント」作品売買について研究した。 令和4年度では、デュッセルドルフ宮殿美術館(旧市立美術館)で保存されている、ナチス時代当時の手書きの作品売買リストから、「若きラインラント」メンバーの作品を抽出し、手書きを解読、Exelでリスト化することに重点が置かれた。引き続き令和5年度には、このリスト資料を精査し、さらにデュッセルドルフ市立公文書館に保管された、当時の市立美術館に関する書簡など膨大な書類と照らし合わせることで、「若きラインラント」の作品売買の変遷をたどった。その結果、以下のことがわかった: 美術館が購入した作品の特徴と、押収された作品・美術館が手放した作品の特徴を比し、また、そこに画廊が介入することで、美術館や作家がナチスが求める以上に過度に順応するに至ったことを明らかにした。また画廊が介入することで、美術館や市当局が収益を求めるようになった事実も明らかとなった。 この研究成果については、令和5年9月14日に、成城美学美術史学会第16回例会にて「ナチス時代、「若きラインラント」の美術館における作品購入についてー「デュッセルドルフ市立芸術コレクション」の作品売買・寄贈目録1913-1953」として口頭発表した。さらに年度内に論文にする予定であったが、コロナと重篤な後遺症により、断念せざるを得なかった。令和5年度の3月におけるデュッセルドルフ宮殿美術館等での調査結果も踏まえ、令和6年度に改めてその内容を論文として刊行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナにかかり、その後も重篤な後遺症に悩まされたことにより、令和5年度に論文としてまとめたかったことが不可能になった事実はあるが、その後の研究自体は進んでおり、令和6年度にその研究成果を論文として刊行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ナチス時代の画廊と個人コレクターにおける「若きラインラント」の作品売買に焦点を当てる。美術館が基本的にナチスの芸術政策に縛られる立場だったのに対し、限定的な画廊では前衛美術作品が売買され、個人コレクターの作品購入は禁じられていなかったことが近年の研究で指摘されている。それを踏まえ、「若きラインラント」の作品売買にかかわった画廊主や個人コレクターの作品蒐集の状況を取り上げる。特に令和元年度の研究ではとらえきれなかったフェーメル画廊や、より多くの画廊や個人コレクターの資料調査をする:作品売買・蒐集の状況とそのネットワークをとらえ、いかに作品が生き延び得たのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月下旬のドイツ滞在中に、旅費以外に資料購入代金など、合計でいくらかかるかわからなかったため、旅費以外の残額を据え置き、それを最終的に余っていた本学の教員活動経費で賄ったため。 次年度使用額は、資料の購入等に充てる。
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