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2023 年度 実施状況報告書

シュルレアリスム美術における展覧会の機能に関する総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K00182
研究機関九州大学

研究代表者

石井 祐子  九州大学, 基幹教育院, 准教授 (60566206)

研究分担者 長名 大地  独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, 企画課, 研究員 (00850900)
進藤 久乃  國學院大學, 文学部, 准教授 (40613922)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードシュルレアリスム / 展覧会 / 展覧会カタログ / アーカイブ / オブジェ / 展示空間 / テクスト空間
研究実績の概要

2023年度は、研究計画に従い、シュルレアリスムの展覧会に関する具体的な事例研究を深化させた。研研究代表者の石井祐子は、9月に英仏のアーカイブで展覧会関連の一次資料調査を行い、その成果の一部を、12月に開催したシンポジウム「シュルレアリスムと展覧会:展示空間とテクスト空間のひろがり」で発表した。同シンポジウムでは、シュルレアリスム研究および近現代美術研究を牽引する鈴木雅雄氏、河本真理氏、齊藤哲也氏を招聘し、1920年代から現代に至るまでに開催されたシュルレアリスム展および関連する展覧会に関する発表を行っていただいた。総合討議では、シンポジウム参加者を含め、展示空間とテクスト空間の関係について活発な議論が行われ、多角的に考察を深めることができた。

研究分担者の進藤久乃は、前之園望氏を招いて公開研究会「第二次世界大戦直後のシュルレアリスム展」を企画・開催した。コブラグループの「時代を通じたオブジェ」展(1949)をめぐって口頭発表を行い、論文も発表している。同じく研究分担者の長名大地は、戦後日本で開催されたシュルレアリスム展を中心に、展示の再構成や再演を通じて考察を深め、様々なかたちで成果発表を行った。加えて、利根川由奈氏、松岡佳世氏、中田健太郎氏を招いて「シュルレアリスム宣言100年記念講演会」を企画実施し、自身も「東京国立近代美術館とシュルレアリスム」と題する発表を行った。研究協力者の長尾天は、ヒューストンで開催された国際学会(ISSS)でケイ・セージの作品と展示に関する口頭発表を行い、その成果を論文として公表した。

今年度はとくに、研究メンバー間以外でも、数多くの専門家と本研究課題に関する議論を深める機会を得られたことの意義が大きい。いずれの機会にも、考察を深化・拡張するにふさわしい幅広い観点が提出され、昨年度の理論的研究を具体的事例研究とともに進展させることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

【研究活動】今年度は、計7回の定例会に加え、シンポジウム(「シュルレアリスムと展覧会:展示空間とテクスト空間のひろがり」2023年12月23日、國學院大学)、公開研究会(「第二次世界大戦直後のシュルレアリスム展」、2024年2月24日、オンライン)、講演会(「シュルレアリスム宣言100年記念講演会」2024年3月17日、東京国立近代美術館講堂)等を企画・実施し、当初の計画以上に幅広く活動した。とくに、研究メンバー以外にも多くの研究者を招いて専門的な議論を複数回行うことで、本研究課題のテーマについて多角的に議論を深めることができた。また、研究代表者が9月にイギリスおよびフランスに滞在し、主にテート・アーカイブ(テート、ロンドン)やカンディンスキー図書館(ポンピドゥー・センター、パリ)、フランス国立図書館(パリ)等で関連する展覧会カタログや展覧会資料等の一次資料調査を行うことができた。
【成果発表】本研究課題に取り組むメンバーが各々、口頭発表や論文として着実に成果を発表した。加えて、研究分担者(長名)の企画によって、一般の聴衆にも広くひらかれた講演会(上記)やシュルレアリスム関連資料の紹介(東京国立近代美術館「アートライブラリからのおすすめ」シュルレアリスム関連資料、海外編および日本編)など、幅広いアウトリーチ活動も行うことができた。よって、全体として当初の計画以上に順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

2022年度前半は、シュルレアリスムにおける展示をめぐる言説と理念を批判的に再考察するため、同時代の展示をめぐる言説と理念を概観し、シュルレアリスム美術の展開における本テーマの広がりを再考した。さらに、2022年度後半と2023年度は、その成果をふまえ、具体的事例における展示空間とテクスト空間について、作品やイメージの取捨選択や構成論理等から互いの構造的関係を分析した。
次年度は最終年度のため、これまでの研究を総合し、シュルレアリスム美術の展開に位置づけることで、個別研究から総合研究へと舵を切る。すなわち、事例研究によって付された点と点を結び、展示、印刷物、テクスト、理念等の有機的連関の中でのシュルレアリスムの展覧会の機能と意義を立体的に捉えたい。こうした研究によって、これまでに提出された多様な論点を総合的に考察し、議論するとともに、その成果をシンポジウム等で総括することを目指す。また、それらの研究成果を報告書としてまとめる予定である。

次年度使用額が生じた理由

今年度の研究をまとめる際に必要な年度末の物品購入や一部の国内調査を次年度4月以降に行う必要が出たため、予算の一部にわずかな次年度使用額が生じた。これらについては、全体の研究計画に従って2024年度に適切に執行する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 「抽象と幻想:非写実絵画をどう理解するか」展(1953年)について2024

    • 著者名/発表者名
      長名大地
    • 雑誌名

      東京国立近代美術館研究紀要

      巻: 28 ページ: 34-62

  • [雑誌論文] イベント報告:「VRヘッドセットで「抽象と幻想」展をプレイバック!」について2024

    • 著者名/発表者名
      長名大地
    • 雑誌名

      現代の眼

      巻: 638 ページ: 67

  • [雑誌論文] 幽霊とゲームを ―― ケイ・セージ「ユア・ムーヴ」展(1961年)について2024

    • 著者名/発表者名
      長尾天
    • 雑誌名

      WASEDA RILAS JOURNAL

      巻: 11 ページ: 85-99

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] クリスチャン・ドートルモンと「時代を通じたオブジェ」展 : シュルレアリスム・オブジェの一形態2023

    • 著者名/発表者名
      進藤 久乃
    • 雑誌名

      國學院雑誌

      巻: 124 ページ: 93~107

    • DOI

      10.57529/0002000192

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] コラム2 展覧会記録の利活用2023

    • 著者名/発表者名
      長名大地
    • 雑誌名

      ミュージアム・ライブラリとミュージアム・アーカイブズ(水谷長志編、樹村房)

      巻: - ページ: 102-107

  • [雑誌論文] ミュージアム・アーカイブズの活用── プレイバック「抽象と幻想」展(一九五三ー一九五四)を通して2023

    • 著者名/発表者名
      長名大地
    • 雑誌名

      国立国際美術館ニュース

      巻: 251 ページ: 2-3

  • [学会発表] シュルレアリスム・オブジェからコブラグループの「時代を通じたオブジェ」展(1949)へ2024

    • 著者名/発表者名
      進藤久乃
    • 学会等名
      公開研究会「第二次世界大戦直後のシュルレアリスム展」
  • [学会発表] 東京国立近代美術館とシュルレアリスム2024

    • 著者名/発表者名
      長名大地
    • 学会等名
      「シュルレアリスム宣言100年記念講演会」
  • [学会発表] Playing the Game with the Ghost: Kay Sage’s Last Exhibition “Your Move” (1961)2023

    • 著者名/発表者名
      Takashi NAGAO
    • 学会等名
      5th Annual Conference of the International Society for the Study of Surrealism
    • 国際学会
  • [学会発表] シュルレアリスム展のカタログ研究の現在2023

    • 著者名/発表者名
      石井祐子
    • 学会等名
      科研研究会・第10回定例会
  • [学会発表] ペーパーズ・オブ・シュルレアリスム考:展覧会資料の分析からみえること2023

    • 著者名/発表者名
      石井祐子
    • 学会等名
      学術シンポジウム『シュルレアリスムと展覧会:展示空間とテクスト空間のひろがり』
  • [図書] ミュージアム・ライブラリとミュージアム・アーカイブズ2023

    • 著者名/発表者名
      水谷長志編著、長名大地
    • 総ページ数
      301
    • 出版者
      樹村房
    • ISBN
      9784883673773
  • [備考] 東京国立近代美術館「アートライブラリからのおすすめ」シュルレアリスム関連資料(海外編)

    • URL

      https://kinbiopac.momat.go.jp/opac/rmbook/?rmtype=4&lang=0&reqCode=rm&dptidpl=&codeno=8

  • [備考] 東京国立近代美術館「アートライブラリからのおすすめ」シュルレアリスム関連資料(日本編)

    • URL

      https://kinbiopac.momat.go.jp/opac/rmbook/?rmtype=4&lang=0&reqCode=rm&dptidpl=&codeno=8

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公開日: 2024-12-25  

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