研究課題/領域番号 |
22K00183
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研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
竹浪 遠 京都市立芸術大学, 美術学部/美術研究科, 准教授 (70463445)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 中国絵画史 / 宋時代 / 文人士大夫 / 絵画関連資料 / 四庫全書 / 蘇轍 / 黄庭堅 / 文人画 |
研究実績の概要 |
本研究は中国・宋時代(960~1279)の絵画史の具体像を、作品・文献の両面から精査し、解明することを目的としている。その主軸として、清に編纂された中国最大の叢書『四庫全書』に収録された膨大な当時の文人士大夫の詩文集から、北宋後期の黄庭堅、秦観、晁補之、張耒の蘇門四学士を中心とする文人たちを主たる調査対象として、作画・鑑賞等の絵画関連記事を抽出し、整理・公開することを目指す。さらに、現存作品の調査を実施し、表現技法と主題、題跋等の文字資料の情報を記録・分析し、文献記録との関係を考察する。上記の課題を達成するため、1年目に当たる令和4年度は、まず『四庫全書』に収録される蘇轍『欒城集』、黄庭堅『山谷集』の通覧作業を進めた。デジタルデータである『文淵閣 四庫全書 原文電子版』も最新のパソコンで使用できるようにし、作業の継続性を確保した。 作品調査については、東京国立博物館、静嘉堂文庫美術館、MOA美術館、大和文華館、神戸市立博物館、九州国立博物館等にて調査・見学を実施し、関連絵画の熟覧、撮影を行った。 主な特別観覧調査および展示作品撮影:九州国立博物館(8月、「羅漢図」など)、MOA美術館(9月、梁楷「鷺図」など)、東京国立博物館(10月、伝陳容「五龍図巻」など)、同(11月、「竹石図」)、大和文華館(11月、伝安堅「漁村夕照・平沙落雁図」など) 主な展覧会見学:静嘉堂文庫美術館「新美術館開館記念展Ⅰ」(10月)、神戸市立博物館「よみがえる川崎美術館」(11月)、東京国立博物館「国宝」(11月)、同「特別展 東福寺」(2023年3月) 調査結果については、画像整理の上、主題、表現技法などに注目し、参考作品も図版類から情報収集を行って、論文化に向けての基礎資料の蓄積を図った。また、蘇門の文人たちの師である蘇軾の絵画制作に関する論文を執筆し、令和5年度刊行予定の論文集に寄稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1 文献資料の探索・読解について:『四庫全書』に収録される北宋後期の詩文集の通覧については、これまでの経験も踏まえ着実に実施できている。一方で、見出した絵画関連事項を表に打ち込む作業については、専門分野の知識をもった若手研究者にアルバイトで依頼する予定であるが、今年度は上記論文の作成を優先したこともあり、作業依頼を進めるに至らず、資料集の作成を見送ることにした。本年度分の調査結果も、次年度の資料集には反映させる予定である。 2 作品調査: 国内に収蔵される宋代絵画および、その様式を考察する上で関連のある作品の特別観覧調査および展覧会の見学は、コンスタントに実施することができた。得られたデータの分析と文献成果も踏まえた考察が今後の課題である。また、海外での調査については、新型コロナウイルス流行期間には実施できていなかったため、実現に向けて特に計画的に進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1 文献資料の探索・読解について:『四庫全書』に収録される北宋後期の詩文集の通覧作業を継続する。現在と同様のペースで週ごとの目標を立てて実施する。見出した絵画関連事項の作表作業についても、専門知識を備えた若手研究者に打込みのアルバイト作業を依頼し、促進を図る。 2 作品調査:前年度に引き続き京都国立博物館、東京国立博物館および、関西を中心とした国内の美術館・博物館の調査を行う。また、海外に収蔵される宋代絵画および関連作品についても、社会情勢に配慮しつつ調査を進める。 3 研究成果の発表:文献探索の成果を資料集として刊行するため、上記データの作表作業をアルバイトも活用して進める。特に夏季、冬季、春季の休業期間には集中的に時間をとる。また、研究により得られた知見を、論文、調査報告会、講演会、講義等によって公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度後半に、当該研究に関する論文の作成を優先したため、当初予定していた文献資料整理作業(アルバイト依頼)の費用が発生せず、その分の人件費に残額が生じた。これについては、次年度に速やかに進めていく。
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