研究課題/領域番号 |
22K00187
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
宮崎 法子 実践女子大学, 文学部, 教授 (20135601)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 田能村竹田 / 岡田半工 / 橋本青江 / 大坂画壇 / 日本近代の南画家 / 波多野華崖 / 王原祁 / 石涛 |
研究実績の概要 |
22年度も新型コロナの影響により、海外調査の実施に困難があったため、日本の幕末から近代にかけての南画家、谷文晁、田能村竹田、岡田半工、また半江の弟子であった女性画家橋本青江について、中国画がどのように学ばれ、それが作画へどのような影響をあたえたのかについて具体的に考察を進めた。特に田能村竹田と橋本青江については、代表作を含む多くの作品を網羅的に調査することができた。それによって、特に従来研究がほとんど行われていなかった女性文人画家橋本青江の作画の特徴や画風の変遷についての研究を進め論文として発表した。また、同じく大坂出身の女性文人画家波多野華涯についてもまとまった作品調査を行う機会を得て、江戸から近代における女性文人画家に焦点をあて、中国画学習がどのように作画へ表れているか、また江戸時代と近代の中国との直接交流など環境の変化が興り、また日本社会や文人画をとりまく状況が大きく変化し、中国画やさらに西洋画などを含み絵画そのものに関する情報量の急激な増大のなかで、その状況の変化がどのように南画家の作画に影響を及ぼしたのかを具体的に確認した。 また、近代に日本に新たにもたらされた中国の文人画を代表する、清初の正統派の王原祁と個性派の石涛の作品を取り上げ、彼らの対照的な文化的環境や古画学習機会の差異という視点から、それぞれの作画を再検討した。 以上の成果は、「橋本青江の画業について初探」として、またこれまでの中国美術史研究を総括した「研究回顧」のなかに一部指摘し論じた。また、学科講演会での講演でも、石涛と王原祁という対照的な環境のなか同時代を生きた文人画家の作画を比較しつつ、古画学習と個人様式の関係について指摘した。この口頭発表の内容を充実させ、23年度に論文として発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査は行えなかったが、日本における南画家たちの中国画受容について、江戸時代と近代の画家について、画家の代表作を含む多くの作品を集中して調査することが出来た。それによって、画家が得られる情報が、画家の独自な様式や、表現の豊かさに及ぼす影響を確認し、情報量の多さが個性的表現と相反し、作品の魅力を減ずる傾向にあることなどを把握できた。また、今後、研究が進んでいない関連作品調査の必要性を認識した。それらの調査を通じて得た視点によって、当初の計画通り、清初個性派の石涛画を見直し、理想的な文化環境にあった同年の正統派の画家王原祁と対照させ検討を行い、石涛画の個性と古画学習機会についての新知見を得るなど、一定の研究の進捗が果たされた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、江戸時代以来の大坂の文人画と文人文化についての調査を継続し、従来研究がほとんど行われていないにもかかわらず、日本特に大坂の文人たちの間での中国画受容という点からみて重要な立場にいて、多くの南画家をつないだ岡田半江の作画について、具体的な調査を進める。さらに、橋本青江と波多野華涯の生涯と作画や、文人画家の近代に関する考察をこれまでの作品調査をふまえてまとめる作業を行う。また王原祁と石涛の古画学習と個性の関係についても論文としてまとめる。 これら日本の状況についての研究継続と、今年度までの研究成果のまとめの作業とともに、今後の海外調査が可能になったため、準備が整ったところから調査を開始する。2023年度は台湾や韓国などでの作品調査を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により、予定していた海外調査が実施出来なかったため、2023年度はこれらの調査を実施する予定である。
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