研究課題/領域番号 |
22K00190
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研究機関 | 沖縄県立芸術大学 |
研究代表者 |
松本 隆 沖縄県立芸術大学, 美術工芸学部, 教授 (00267345)
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研究分担者 |
飯塚 義之 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 客員研究員 (90804203)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ルカ・デッラ・ロッビア / 施釉テラコッタ / 彫刻 / マヨリカ陶器 / ルネサンス / 陶芸技法 / ピッコルパッソ / 化学分析 |
研究実績の概要 |
当研究は、イタリア・ルネサンス期にフィレンツェのデッラ・ロッビア一族の工房において制作された施釉テラコッタ彫刻の技法的特性を、同時代のマヨリカ陶器との比較を通じて解明することを目的としている。デッラ・ロッビア工房は、テラコッタで造形した素地の上に釉薬をかけて仕上げるという独創的な彫刻の表現形態を創始し、様式というよりもこの技法そのものが工房作品のトレードマークとなった。工房の事業拡大に伴い質の低下も避けられなかったものの、初代のルカが創始した粘土と釉薬の調合法は、3世代にわたっておおむね引き継がれた。その後ルネサンス美術の終焉と時を同じくして工房も消滅し、この一族の中で秘密裏に伝えられた技法も失われた。当時の原材料を欠く今日において、この技法を完全に解明・再現することは困難である。しかしながら、16世紀半ばにイタリア中部で成立したチプリアーノ・ピッコルパッソ著『陶芸三書』に記述された当時のマヨリカ陶芸技法の中には、デッラ・ロッビア工房でも用いられたと思われるものが見出せる。 そこで本課題では、この『陶芸三書』の解読を軸にルネサンスの施釉テラコッタ彫刻制作技法に対し分野横断的アプローチを試みる。再現実験では、実制作を通じて理論書内の記述の妥当性を検証しながら、ロッビア工房へ応用された可能性のある技法や調合の解明を試みている。分析化学では、これらの再現品や原材料のほか、デッラ・ロッビア工房のオリジナル作品の分析も実施する。また日本とイタリアに所蔵される陶片の分析なども視野に入れ、データを蓄積する。美術史学では『陶芸三書』や同時代の芸術理論書の解読、作品の様式分析に取り組んでいる。 代表者、分担者、協力者は、日本、台湾、イタリアと離れた研究拠点で各自の課題に取り組んでいるため、オンライン上で頻繁な意見交換を行い、年度末にはオンラインで3者の会合を実施した(2月24日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、研究代表者・松本隆の所属大学異動があった。そのため、実験用の整備・機材を調達し新たに充実させることで、今後3年間で行う再現実験部門の研究環境を整えた。年度後半では、ピッコルパッソの『陶芸三書』の記述に基づいた釉薬配合と焼成実験の一部を進め、試料の蓄積に努めた。そこで当初予定していたこれらの試料の研究分担者・飯塚義之による化学分析については2023年度の課題として見送り、分析化学分野ではロッビア工房陶片を分析対象とした先行研究の把握が進められている。 美術史学部門においては、イタリア在住の協力者によって6件の現地調査が実施され、とくにアレッツォ地方で1週間かけて行った調査では、この地方に分布する40点以上のロッビア工房作品を実見・撮影し、世代交代にともなう様式と施釉技術の質の変容を確認した。またルネサンス期のテラコッタ彫刻に関連する各展覧会や、現地の協力者・ジャンカルロ・ジェンティリーニ氏との意見交換を介して最新の研究状況を把握した。さらに同協力者は、『陶芸三書』の第二書の翻訳・註解をおおむね順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は新たな機材(電気窯)を導入して環境の整備を終え、釉薬類の配合、焼成実験を実施する。 ピッコルパッソ『陶芸三書』にある失われた技法のうち、ワインの澱・酒石を用いたフリットの再現には初年度から焦点をあててきたが、2023年度中にこの成果を何らかの媒体で発表したいと考えている。そのために代表者は各種実験を進め、試料の分析が実施される。協力者は『陶芸三書』における該当箇所の和訳刊行に向け、引き続き読解の精度を高めていく。共著での論文発表を目指し、オンラインおよび対面での意見交換の頻度を上げる必要がある。 3年目となる2024年度は、代表者・分担者・協力者の全3者でのイタリア現地調査を予定している。この渡航は簡易型の分析機器による組成分析を最大の目標としている。そのために協力者は、2023年度のうちにジェンティリーニ氏の仲介のもと美術館や古物商の協力を要請する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に分析予定としていた試料の分析を2023年度にまとめて行う方針に変更した。また、コロナ下での移動制限によって、旅費の使用がなかった。そのため、分析および旅行を2023年度に行う計画とする。
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