主に1990年代以降の日本の美術批評を調査した。1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災、2020年の新型コロナウイルスといった社会的出来事をそれぞれ節目として捉え、それら以前・以後でどのように言説が異なっているのかを調査した。また、2011年の東日本大震災以降の美術状況を「アート・コレクティブ」の時代として捉え、Chim↑Pom、梅津庸一の主宰するパープルームなどを中心に検討している。自身が論考や相関図の作成で関与した『美術手帖』2018年4・5月合併号「アート・コレクティブ」特集を踏まえ、発展的に考察を行っている。その成果は刊行予定の単著に組み込まれる予定であるが、関連したアウトプットとして、「「日本美術史」を書き換える100年単位の挑戦」(『美術手帖』2024年4月号(『美術手帖』2024年4月号書評)がある。 また、本研究課題の前段階となる1970年代以前の美術動向についても調査した。具体美術協会からもの派が戦後日本美術の主流の美術動向として語られることがあるが、一方で黒ダライ児『肉体のアナーキズム 1960年代・日本美術におけるパフォーマンスの地下水脈』(グラムブックス、2010年)など、1960年代の反芸術といった美術動向の再評価も進んでいる。本研究では、1960年代の反芸術の美術家たちが1970年代以降にどのような活動をし、いかなる言説を構築していったのかを調査している。関連したアウトプットとして、「あさいますお論:尖底点の視点、曺良奎論から」(『REAR』第50号、2024年3月、68-76頁)を発表した。
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