研究課題/領域番号 |
22K00264
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
梅山 いつき 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (50505401)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 小劇場演劇 / 劇場文化 / 文化政策 / 地域振興 |
研究実績の概要 |
本研究は新型コロナウィルス感染症拡大によって、全国の小劇場がどのような活動変容を遂げ、業界内、および地域、そして観客との間にどういった新たな「つながり」を形成しようとしているのかを調査研究するものである。2022年度の演劇界は、感染症対策にも慣れ、公演数も徐々に増加し、2020年以前の状態に回復傾向にあった。しかしながら、観客収容人数に制限を設けている劇場は多く、秋以降に第8波が起こった際には中止に追い込まれる公演が出るなど、予断の許さない状況が続いていた。本年は、こうした業界全体の動向を見つつ、特に富山県南砺市利賀村にある利賀芸術公園における劇団SCOTの取り組み、京都市内の複数の劇場施設を使って開催された演劇祭「KYOTO EXPERIMENT2022(以下、KEX)」、そして京都のTHEATRE E9 KYOTOをはじめとする関西圏の小劇場の活動を調査した。SCOTは毎夏、演劇祭を開催しているが、コロナ禍にあって海外招聘公演枠を縮小しつつも、新たな企画が催された。それは利賀村、静岡、鳥取、豊岡といった四地域の拠点劇場から若手演出家による作品を持ち寄って上演する企画である。地域をつなぐネットワークが今後、創作にどのような影響をもたらすのか今後も注目したい。これ以外にも本年調査した公演の中には、活動拠点の異なるアーティストが地域を超えて共同制作する試みも見られた。緊急事態宣言時に「移動」が著しく制限されたことをきっかけに、劇場や劇場を利用するアーティスト同士の連帯意識が強まったことで生まれた取り組みといえる。KEXでは、コロナ禍の生活において希薄になった身体に対する意識を問題にし、観客に不在の身体を想起させようとする挑戦的な作品が上演された。リアルとバーチャルの垣根を超えて、新たな共有のかたちを探る試みであった。こうした調査結果は劇評やシンポジウム等でその一部を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初より、社団法人全国小劇場ネットワークに参加している劇場を主な調査対象としており、本年はそのうち関西圏を中心に調査した。年度初めは出張を組めなかったために、年度末に調査出張が集中してしまったが、研究実績に記載したような新たな動向を調査することができたため、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
調査対象とする劇場の範囲を拡大し、新潟、長野、鳥取、愛媛などの劇場も調査したい。また、大阪、京都の劇場は近畿・中国・四国地域のハブ的な機能を果たすことも多いことから、引き続き調査対象とする。また、本研究で取り上げる予定にしている佐藤信(演出家・劇作家)の横浜・若葉町ウォーフでの活動も調査したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に行った出張分の清算を年度内に終えられなかったことと、新型コロナウィルスの蔓延状況を鑑み、当初予定していた出張が行えなかったために次年度使用額が生じてしまった。次年度は計画的に出張を行いたい。
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