研究課題/領域番号 |
22K00273
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
木下 浩 岡山大学, 医学部, 客員研究員 (50838092)
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研究分担者 |
松村 紀明 帝京平成大学, ヒューマンケア学部, 准教授 (00422379)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 隔離病舎 / 避病院 / 伝染病 |
研究実績の概要 |
これまで明らかにされてこなかった各市町村に設置された避病院・隔離病舎について、その実態の解明を目的としていいる。 今年度は岡山県に設置された避病院や隔離病舎についての資料の残存状況の情報を収集し、実際に資料を調査・確認し、撮影を行った。調査機関としては、岡山県立図書館、岡山県記録資料館、岡山市立中央図書館、倉敷市歴史資料整備室、井原市まほろば歴史館、旧中央町誌編さん室、瀬戸内市立図書館、旧奥津町史編纂室などで、資料撮影枚数は1万枚を超える。これらの調査によって、これまであまり公にされてこなかった避病院・隔離病舎の資料が多数残存していることが判明した。例えば避病院の運用状況や経費、患者の入院中の状況を記した日誌や、避病院を設置するときに村議会で設置場所について交わされた議論など、避病院・隔離病舎を行政文書からだけでなく多面的に捉えることのできる史料を発掘できたことは大きな成果といえる。それらの成果を学会などで地域ごとに発表していった。 しかし、史料の数の多さから、史料の撮影は半分にも到達しておらず、引き続きの撮影は今後の活動の一つとなる。また、多くの史料が残されている地域がある半面、全く残されていない地域もあり、さらには行政側の協力がなかなか得られない箇所もあって、地域的に資料の確認状況に偏りが見られる。これらの偏りの解消を目指していくとともに、得られた情報から文書だけでなく現地調査や聞き取り調査についても行っていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れ気味である大きな理由は二つ、一つめは想像していた以上に資料の残存数が多かったことである。最初に行った旧奥津町史編纂室では、避病院・隔離病舎関係文書は「衛生」の簿冊に綴じてあることが多く、その簿冊を調査することで目的を果たせると考えた。しかし、そののちの他館の調査で避病院・隔離病舎については議会関係などの文書綴りにも史料が多く存在することが判明した。その結果、合併前の旧町村が残した文書綴りの中に、「衛生」の簿冊がなくてもその他の文書綴りの中に史料を発見するなどが相次ぎ、必然調査をしなければならない文書綴りが格段に増大し、その分調査や撮影が送れている。 もう一つは、避病院・隔離病舎については行政文書に多くの史料が含まれていることから、行政側の協力が不可欠であるということである。岡山市立中央図書館や倉敷市歴史資料整備室のように公開の設備や段取りが決まっている市町村では比較的調査がしやすいが、そのような体制が整っておらず、どこかの倉庫にあるといったような自治体も多い。また、市町村史を作成した後、史料がどこにあるか分からない、担当者がいないといったような自治体もある。そのような自治体に文書史料の提供をしていただくには時間がかかり、依頼はしているが具体的に調査日程などのめどが立っていない市町村もある。また、衛生行政のおおもとである保健所も、新型コロナウィルスの流行で、調査を依頼できる状況ではなく、これもまた調査の進捗状況が遅れ気味な理由となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、現在判明している資料群の調査・撮影と、現在アプローチしている箇所も含めて、市町村への資料確認と調査を進めていくことが中心となる。 調査・撮影については現在きちんと各箇所で保管されており、撮影も可能であるので、アルバイトを使うことも視野に入れて、年度の後半に行っていきたい。調査・撮影の中心となる箇所は岡山県記録資料館や倉敷市歴史資料整備室、岡山県立図書館などであり、ここに残されている資料の撮影と調査については次年度中に終わらせたい。 市町村への資料確認と調査については、引き続き人脈などあらゆる方法を使いながらアプローチを行い、資料の発掘を目指す。特に備中北部、高梁方面や新見方面、そして備前東部方面に力を入れて資料を発掘したい。 また、これまで得られた情報から、隔離病舎の跡地など現地の調査や聞き取り調査なども行っていく。さらには日本で設置された隔離病舎の原型ともいえる沖縄の「隔離所」についても現地の情報や資料の収集などを行っていきたい。 次年度は調査を行い、撮影を進めて、避病院・隔離病舎を分析するデータ収集を最大の目的とする。特に避病院・隔離病舎の予算・決算や具体的な運営内容、日誌などの患者側の資料などに注目をしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス流行による調査・出張の制限による差額が発生した。次年度はコロナウィルスの制限が緩和されたため、県内調査の回数の増加と県外の調査、特に広島や山口、愛媛、香川など近隣県の公文書などの調査を行っていく。 また、アルバイトによる史料の撮影も考慮していく。
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