研究課題/領域番号 |
22K00284
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
舟津 悠紀 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (10937650)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 優生学史 / 優生思想史 / 優生政策 / 衛生行政 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地方衛生行政下における優生政策・優生行政の展開像を示すことにあった。アプローチとしては①優生保護法による強制的な不妊手術の実態について、そこに生じた地方自治体における偏差・相違を明らかにすること。②50年代・60年代における変化を検討することが求められた。そのため、研究活動としては「(1)強制的な不妊手術の実態に係る資料の収集」「(2)資料分析」「(3)総合的な比較分析」が必要となってくる。 今年度の研究活動では「(1)強制的な不妊手術の実態に係る資料の収集」および「(2)資料分析」を行った。前年度の資料検討・精査から、調査先を再編した自治体(手術件数の多い自治体:北海道・静岡県・大分県・岡山県・大阪府/手術件数の少ない自治体:群馬県・福井県・奈良県・鳥取県)、加えて京都府・兵庫県について、(1)資料調査を継続実施した。加えて、(2)資料分析としては大分県の検討を行った段階にある。 これらの調査・検討から、資料・資料情報の多寡について比較を実施、研究対象から、奈良県・京都府の除外を判断した。また、予定の優生保護法関連資料や自治体刊行資料の収集は完了、必要となる資料群の整理・データ打ち込みはほぼ完了した。また、前年度と同様、資料の散逸を補完する『衛生統計』や行政の年度報告書『衛生概要』などの資料・資料情報、個人分析に用いる郷土文献・資料・資料情報についても調査収集活動を継続している。「(2)資料分析」については大分県の検討を行い、衛生行政におけるパラダイム変遷を整理、人物の抽出・検討作業などを実施して、「(3)総合的な比較分析」に際して必要となる比較変数の抽出検討を行った。 さらに、比較変数の抽出に向けて必要と判断した周辺資料として障害者福祉の機関誌など調査・研究を行い、優生政策の時代像を検討するとともに、新たに必要となった新規資料・追加資料の調査を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の主とした研究活動である「(2)資料分析」にあっては、大分県を最初として衛生行政におけるパラダイム変遷を整理、人物の抽出・検討作業などを実施して、「(3)総合的な比較分析」に際して必要となる比較変数の抽出・展望を行った。しかし、前年度より指摘していたマスキング範囲の想定以上に大きいケース、得られる情報量の少ないケースについて資料調査により補完が求められている状況が依然としてある。また、大分県の調査から各府県の比較変数を検討したことにより、新規・追加資料の調査が求められている状況は前年度以上となっており、継続的な資料調査を余儀なくされている。 収集した資料群の整理・データ入力については、早期の段階として前年度から実施を行えているが、前年度以上にアルバイト院生の確保が容易でない状況に直面しており、想定以上にデータ入力作業に時間を取られることとなった。 そのため、(2)については大分県以外の他府県について資料分析を十分実施できていない状況にあり、これらの状況を総合して進捗状況としては、やや遅れていると認識している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は主となる研究活動として「(3)総合的な比較分析」を積極的に実施していく予定である。ただし、【現在までの進捗状況】にて指摘したように、資料的な制約にともなう追加調査による補完、新規資料の追加調査を継続的に実施する必要がある。また、「(2)資料分析」についても大分県以外の検討対象府県について実施していく必要がある。 今後における研究の推進方策として①ほとんど作業の完了した整理・入力した資料群およびデータをもとに「(2)資料分析」を実施していく。②この際、大分県の検討より得られた比較変数をもとに他府県の資料分析を行っていく。③大分県の調査によって確定した比較変数を精査しつつ、それに基づき、必要資料の絞り込みを行い、【現在までの進捗状況】で指摘した追加資料・新規資料の調査を最小化して適宜実施していく。 ②により得られた検討結果をもとに④次年度実施予定となっている「(3)総合的な比較分析」を実施して、地方衛生行政における優生政策・優生行政の展開像を総括する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度では物品費および人件費・謝金において予算に残額が生じた。前者については大学の図書・備品の使用による代替が想定以上に可能だったためである。後者の当初使用計画では、資料の整理・デジタル化、データ入力等をアルバイト院生の雇用によって実施していくことを想定していた。しかし、前年度以上にアルバイト院生の確保に困難が生じており、自分自身で作業を実施することによって残額が生じることとなった。 次年度は「現在までの進捗状況」で言及したとおり、資料情報の多寡を補完すべく資料調査を実施していくと同時に、各府県の比較を可能とする新規資料および追加資料の調査収集の必要が生じている。この点使用計画としては前年度と同様に主に旅費としての使用を想定しており、当初より多くの調査実施を予定している。 加えて、次年度においては研究拠点の変更が生じたため、研究備品・設備の整備が必要となっており、この点多くの物品費使用を予定している。
|